辞書をめぐるお話 第2話
たもつ
辞書は本当は辞書になんか
なりたくなかったんだよ
本当は絵本になりたかったのさ
だから、辞書は本棚で寝ている間
書かれているすべての文字を
手荷物預かり所に預けて
夢の中で
真っ白な頁に
いろんな絵を描いているんだ
人間が辞書を捲ると
慌てて辞書は目を覚まし
手荷物預かり所から文字を取ってくる
そしていつものように澄まして
この言葉の意味はこうである、
なんて講釈を始める
でも慌てたものだから
時々文字がひっくり返っていたり
書いてある場所が違ってたりする
よおく探して見ると
発見できるかもしれないよ
もっとも、インド洋と同じくらい広いプールに
砂鉄を巻いて
その中から一粒の石英を見つけるくらい
難しいことなんだけどね