辞書をめぐるお話 第2話
たもつ



辞書は本当は辞書になんか
なりたくなかったんだよ
本当は絵本になりたかったのさ

だから、辞書は本棚で寝ている間
書かれているすべての文字を
手荷物預かり所に預けて
夢の中で
真っ白な頁に
いろんな絵を描いているんだ

人間が辞書を捲ると
慌てて辞書は目を覚まし
手荷物預かり所から文字を取ってくる
そしていつものように澄まして
この言葉の意味はこうである、
なんて講釈を始める

でも慌てたものだから
時々文字がひっくり返っていたり
書いてある場所が違ってたりする
よおく探して見ると
発見できるかもしれないよ

もっとも、インド洋と同じくらい広いプールに
砂鉄を巻いて
その中から一粒の石英を見つけるくらい
難しいことなんだけどね





自由詩 辞書をめぐるお話 第2話 Copyright たもつ 2004-10-08 23:42:20
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