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{引用=
外は雨。
窓のガラスに幾粒もの涙が
透明な線を斜めに描いていく。
ベッドの上からその景色を見上げていると
左手がやさしい感触に包 ....
わたのある夏の日の
火の粉とともに
野原の蒸気は渦をまく。
ぼくらは真赤です。
麦畑をすぎる
風になまえがあるように
瞬きもまた瞳。
ぼくらは真赤です。
恋をしたら
ひとはみんな
詩人になるっていうけれど
詩人のつもりのぼくなんて
いつまでたっても
恋ができないのでした
六月の
ベルベットの小道を
今夜もぼくは歩きます
....
{引用=
あなたの胸に
耳をあて
わたしは
あなたの遠い過去を
あなたの遠いさざなみをきく
風に揺れる草や花
春の雨が黒く濡らす樹木たち
やわらかな若葉を しずくがつたうだろう
....
封筒のいのちが燃やされた朝
高い樹木は舌のかたちに風に揺れ
戦争に行ったままおとうさんは
還ってきませんでした
硬いあおぞらで何かが倒れます
夢の森はいまでも神聖なままですが
月だけが ....
ひげも、へそも、
神さまからもらった。
ティシャツの下に隠れた、
へそ毛も、のびるまんまだ。
流しに放ってある大根は、青々と育ち、
あした、三つ指ついて嫁にいく。
堪らない。
夜は、窓か ....
うす紫に、きれいに染め上がった、
放課後の、
(優しい文脈を結んで)
ぼくは 図書館で、
大好きなきみの名前を、
水文字で書く。
水文字。
右でもなく、
左でもなく、
遠いほうの ....