すべてのおすすめ
ほんとうのことを、
ただ、ほんとうのことを、
触られたくないばかりに、
腹に膜をつくった。
人はそれを「ウソ」と呼ぶだろうか。
半透明のしらたきみたいな私の膜は、
私をみるみる肥らせて、
 ....
ないものがいらない。
ないものがない。
ないものがある。
あるものがない。
ないもののなかのあるものがない。
あるもののなかのないものがない。

ないとあるは背中をあわせて。
互いの糸 ....
そこは、どこへいっても、
同じ通りだった。
人の声や気配はするが、
誰もいない街だった。
けれどどことなく誰かの眼差しを感じた
誰かが見ている。
街が私を見ている。
この街全体が誰かのよ ....
咲き誇る花を殺した。
きれいだったから殺した、
そういえば意味が繋がるだろう。
しかし、私は花を殺すことによって、
自分のなかの花さえも、
千切り殺してしまいたかった。

あなたの腕のな ....
きいぷあうと、きいぷあうと、
誰かが叫ぶ。
きいぷあうと、きいぷあうと、
地から手が伸びてきて、
私の足を掴む。
きいぷあうと、きいぷあうと、
引き戻されたベランダからは、
いろんな人た ....
鏡を覗くと、
影の目がこちらを見ていた。
私も影に視線を返した。
すると鏡から影の手が伸びてきて、
私の輪郭を包み込む。

*

黒い塀がどこまでも続いていた。
私はび塀の向こうの世 ....
黒い鉛筆で、
目にうつるすべてを黒く塗りつぶす。
塗りつぶしたものたちは、
赤く染まっていく。
鉛筆が折れた。
血豆が潰れた。
赤い血が滲み出して、
白いテーブルに滴った。
テーブルは ....
夏草のなかに咲く赤い花、
黄色い花、青い花、
目を細めたそれぞれの眼差しが、
地の上に咲き誇る。
花よ、あなたたちを写真に撮ると、
世界はなんて平らなのだろうか。
立体に馴れた私たちは、
 ....
ピアノ。
私はいつも、
ピアノが弾けない。
キーボードにならたくさんの、
物語を描けるのに。
私は私のピアノの前に、
いつも立ち竦む。

もう何年になるだろうか。
私が原稿用紙に、
 ....
さらり、さらり、
骨になった粉が、
この手から空間へ流れていく。
さらり、さらり、
手にいれたものはなんだったのか。
なにもなかったのではないか。
私たちは手に入れられないものを手にした。 ....
目を瞑ってはいけない、
口を開いてはいけない、
手の足の動きを止めてはいけない。
あなたはそうやって、
私の心の肩を切り落としていく。
そうして切り落とした肉を、
壁中に張りつけて。
あ ....
昨日今日明日、
きのうきょうあす、
くりかえして、
くりかえして、
私たちの雑巾はもうぼろぼろだ。
日々雑巾を絞る。
木綿糸で繋ぎ会わせた縫い目からは、
明日の台所がみえる。
絞る手の ....
めをこえて、
みみをこえて、
のめりこむ。
めりめり、のめりこむ。
目の縁の涙腺に沸いた黄色い虫が、
ぐるぐるまわる。
痒みは好奇心のうねり。
うねりを掻き立てる爪を、
 ....
浮かんでは消え、
浮かんでは消え、
イマージュを繰返し、
私の胸をえぐり抜いていくもの。
ことばとは、憂鬱だ。
生まれてくるまで、
腹痛のような鈍い痛みを孕む。
突き放そうとしても、
 ....
私は黒いものが好き。
私は暗いものが好き。
黒さには深い果てしなさがある。
黒い果てを降りていくと。
暗く真っ赤な川がある。
川には熱がある。
この熱からたくさんの物語が生まれる。
私も ....
彼女は、柔らかな鋭い魔物に
背中を喰われている。
しかし、
実際は彼女が魔物の耳を
自分の喉の指に押し込んでいる。
魔物を押し込んだ指が嗤う。
からからからから、
喉の奥の水車小屋で
 ....
驟雨になって過ぎていく時間の中で、
詩を書かせてくれないか、
誰かが囁いた。

誰かの声は確かに、
黒いペンで、
と言ったはずなのに、
私は赤いペンを背中から差し出す。
私は赤いものば ....
誰がさまようというのだろう。
この名もない路地を。
名もない路地には、
ひと影はなく
だから名もない路地と
なったのであろうが、
名もない路地には、
人影は確かにあった。
その人影は、 ....
救済するために、
骨を食いちぎらなくてはならない。
救済するために、
歯をもぎとらなくてはならない。
救済するために、
皮膚を剥きとらなくてはならない。
救済するために、
肉をかみちぎら ....
あなたの大きく開いた口が、
ちいさな海を吸い込んでいく。
あなたの脳裏を走る列車が、
いくつもの駅を追い越していく。
駅には、
誰もいない人で、
あふれている。
あなたは、
誰もいない ....
あなたは今、
いろいろなことばの海を
旅したいと思っている。
そこには淡い色の薔薇の花束のブーケだったり、
あたたかな木のぬくもりの漂うキッチンだったり、
そんな風景が香ることばを探している ....
手を握りしめたまま、
遠く海の彼方から
やってくる風を待つ。
風は、
あらゆる氷山を突き破り、
たったひとつだけ、
この指に絡みついてくる。
このたったひとつの風は、
幾多の激流を乗り ....
脳髄の奥底で、
渦巻く怒りに似たことばは、
構築を知らぬまま
進むべき道の足跡ばかり探る。

*

机の上に仮面が置かれている。
仮面は口元をカッターでなぞられたように
笑っている。 ....
黒く透明な魔物にとりつかれた指は、
もう止まらない、
もうもどらない、
指が進む先は、
まっすぐ なようでかなり
曲がりくねっている。
指には耳がある。
かなりたくさんの耳だ。
無数の ....
ことばを欲しがる指先が、
熱を帯ながら、
水面をぴしゃりはねる。
指先の熱が水を伝って、
水面に映りこむ私の唇に話しかける。
熱は針のように鋭い薔薇の棘になって、
私の唇を抉じ開け、
舌 ....
沸騰する憂鬱を、
跳ね返すことばが、
さかなになって脳裏を横切っていく。
それを掴もうと、
手を握ったり開いたりしてみても、
私は海底に沈む難破船になって
視線を落とす。

*

 ....
針を指先に刺して、
血の花を咲かせるように、
ことばを呼ぼう。
浮かんでは消えていく気配が、
幻聴によく似た囁きに呼応する。
 ....
夜が皮を剥いで、
真っ赤な朝を迎えたような傷が、
手のひらに滲んでいる。
あなたは見えないナイフを手に私を傷つけた。
 ....
私はさかなをかく。
私はさかなはかかない。
さかなのなかを私はかく。
さかなを支える骨の内部を流れる
熱い海の流れを。



塩焼きにされた秋刀魚にかぶりつく、
がり ....
 何かが書きたいと、パソコンの画面に向う。するとどうだろう、白紙のワード画面が巨大化して此方に近づいてくる。私は呑み込まれる。そんな夢を幾度か見た。画面の内部は、埃臭い舞台裏のような場所だ。壁や床や天 ....
媒体さんのあおい満月さんおすすめリスト(33)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
風船- あおい満 ...自由詩516-5-12
ないとある- あおい満 ...自由詩116-5-12
街を抱く街- あおい満 ...自由詩416-5-11
苦い匂い- あおい満 ...自由詩716-5-10
向こう側- あおい満 ...自由詩116-5-10
吸い殼- あおい満 ...自由詩516-5-8
赤と黒- あおい満 ...自由詩116-5-7
夏草- あおい満 ...自由詩116-5-5
境界線- あおい満 ...自由詩4*16-5-5
呼吸- あおい満 ...自由詩4*16-5-4
心の肩- あおい満 ...自由詩4*16-5-4
- あおい満 ...自由詩516-5-3
黄色- あおい満 ...自由詩216-5-2
空の十字架- あおい満 ...自由詩416-5-1
黒い手- あおい満 ...自由詩516-5-1
疾走する彼女- あおい満 ...自由詩515-12-22
ナイフ- あおい満 ...自由詩615-12-21
ちぎり- あおい満 ...自由詩515-12-19
救済するために- あおい満 ...自由詩415-12-19
腕輪- あおい満 ...自由詩6*15-12-17
大樹- あおい満 ...自由詩13*15-12-16
狡猾な力- あおい満 ...自由詩415-12-13
地図- あおい満 ...自由詩815-12-12
- あおい満 ...自由詩8*15-12-10
シーツ- あおい満 ...自由詩515-12-10
- あおい満 ...自由詩9*15-12-9
残り香- あおい満 ...自由詩715-11-22
パズル- あおい満 ...自由詩815-11-17
もえるうみ- あおい満 ...自由詩19*15-10-20
原点を探して- あおい満 ...散文(批評 ...215-9-16

Home 次へ
1 2 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する