空の十字架
あおい満月

浮かんでは消え、
浮かんでは消え、
イマージュを繰返し、
私の胸をえぐり抜いていくもの。
ことばとは、憂鬱だ。
生まれてくるまで、
腹痛のような鈍い痛みを孕む。
突き放そうとしても、
その腕は私を離さない。

影のようにつきまとう、
縫い付けられた服は、
私の汗を吸いながら、
皮膚の呼吸を絡めとる。
ナイフで削ぎとりながら
落としていったそのなかには、
海のかけらが、
既知の未来として煌めいていた。

手のひらに刻まれた地図には、
たくさんの十字架がある。
眠れない夜の数だけ、
十字架は増えていく。
十字架の後を追いかけていくと、
空に繋がっている。
空には、
十字架に繋がれた人々が、
一定のリズムを刻みながら、
空を漂う。

子どもたちが空に向かい、
靴を投げる。
私の足には靴が消えている。
私は子どものまま、
子どもを置き忘れてきてしまった。



自由詩 空の十字架 Copyright あおい満月 2016-05-01 19:22:08
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