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大阪難波元町に、まぎれ込む
二人の微細な影がゆらめく
幾らかの紙幣で買われた
わずか四時間の締め切られた空間
ユニットバスの洗面台で
歯ブラシをくわえる私の顔の
筋 ....
闇夜に見上げる一等星
きみと視線を交えるひととき
さよなら と揺れながら
囁いた星影は
都会の崖にそっと咲く
冬の菫
童女の様な微笑みが
また逢える日を約束してく ....
指先に透き通って
春の朱の血潮が浮かびあがる
女は白雪の様な顔を両手で隠し
泣いていた
あれ荒んだ心のあなたは
客の少ないバーで何故か気さくに語る
笑顔の背後に宿る夜更け ....
軒端に訪れた冬が
なつかしくて
昔の男に逢ってみる
樹の影の床几に
ひそやかに日が暮れかけて
眉の濃い青年だった
あなたが盃をかたむけている
湯豆腐のなべから上る ....
足許濡らす時雨の冷たさ
夕刻に立ち寄るスーパーで
野菜売り場の陳列棚から
外れた隅へ歩み寄る
(やあ、おかえりなさい!)
わたしに呼びかけて来る
焼き芋機
鼻先へ ....
昨日届いた喪中葉書
十二月が、いそぐ街道で
歩むわたしの跡に光っている
薄いオリエンタルブルーの粘液
これは体のタンパク質と
多糖分と大量の水分
角が右も左も交互に ....
山裾の丘陵地
総合病院の裏出口から
人通りすくない小道を往くと
閑静な民家の中にログハウスも立ち並ぶ
金網張られる路端に
あかるんできた雨空をあおぐ朝顔が
緩い風の懐であ ....
冬の石畳みの
陽だまりを愛しながら
時計の針で刻めない
とおい未来から届く昨日を
思い起こしてみる
追いもしない記憶に追われもせず
そこに立ち止まって
年齢を重ねる自 ....
冴ゆる風にこぼれて舞う
レモン色した木の葉のひと翳り
そういうもので
詩を書きたいとおもう
心に満ちる平穏な日常は、
わたしの気付きもしない情景のなかで
なにものとも く ....
今でも時たま
わたしを誘いに来るお月さま
凍てつきはじめた冬空で
消えいるような音符を奏でます
かつて紅い原野から湧いた
孤独なアンサンブル
じぶんの柔らかかった下腹部か ....
古い白い花の蔭に
恋の嘆きをみていたむかし
チョコレートの銀紙を
折り畳みながら過ごした夜
なつかしい想い出は
楽しく稚い愛の物語
その震えも忘れてはいないけれど
....
さっき山の端に消えてしまった冬茜
建ち並ぶ商業施設の脇を流れる
堂の川
吹きつける風でこまかい波紋が
わずかな灯りを掬って沈み
並木の枯枝にとりのこされた
烏のひと ....
あれは欲求の充足が阻止されたことの
一時的な怒りだったのか
なんにも知ってはいなかった幼女の
ヒステリックが沸点に至り
あの時、
一軒家の玄関ドアに嵌め込まれた
デザ ....
風が散っていった
ウイスキーの琥珀に酔った天地に
男と女が愛し合い
いつの日か又
他人の様にそっけなく
だが にこやかにすれ違う
それが何なのだろう
ふと逢った人 ....
閉じたビニール傘から飛び散る
雨滴
会社の広大な敷地内を車と自転車が往来する
東の正門で守衛室に社員証を提示しても
配属先の建屋へは延々と
アーケードの歩道を歩き続ける
....
急な傾斜の小径をのぼり切れば
大きな旧居の横手に広がる
段々畑が見えてくる
金網のフェンス越し、
至近距離で咲いているアザミへ
iPadのカメラを向けてみる
うつし世の碧 ....
鈍色の民家の瓦と重なって見えた
黒味帯びる朱をのこすだけの
散り落ちぬ大輪のバラ
秋立つ日
貴女はうつむいて想いに耽り
天蓋の星たちが数回瞬く間の短い夜を
すごして ....
小さく硬ばった花片を
朝風に震わせる白菊が霜に打たれて
紫色にうち伏した
昨夜
把えられないあなたの
おぼろな姿が身近く訪れた
手を差し伸べて
髪を撫でようとすると ....
小顔で整ったお顔立ち
吸い込まれてしまいそうなブルーの瞳
それは友人宅を訪問した日、
初対面だった彼女
リビングテーブルの空いた椅子で
貴婦人の如くポーズをとり
私たちの ....
夜のしじまに浮かんでいる
朧月の
のどやかな微笑
(お疲れさまでした)
あなたからスマホへ届く
おやすみなさいの短いメッセージ
いちにちの流動の
しずかさ ....
肌にヒリヒリとした
痛みこそ忘れ去られた闇は
東の、明けきらぬ雲の幕に覆われている
耳にのこるICUの輸液ポンプのモータ音
蛍光灯で煌々と照らされる空間は
ただ白っぽく ....
氷鳴る
グラスの縁に刺さっている
大きめなカットレモン
摘み上げて絞れば
目にもこまやかに射しこんでくる
濃度を増す酸っぱさ
其処は尾道の坂の途中にある喫茶店
....
京都三条大橋の側にあった
六階建の大きな旅館
非常階段の踊り場から見下ろす
起き抜けの街の静けさが好きだった
あの頃は赤のマールボロを一日半箱吸っていた
廊下の重い鉄扉が ....
西陽とたわむれる
噴水の水の音は
子どものようにまるくなってかけまわり
わたしへ小さく手を振って
「またね」
…… 、
鈴懸の樹が葉を落とす風に鎮もる
涼風にのっ ....
遠くにいるあなた
遠くにいても
息づかいを感じる程には一緒に居ない
あこがれのような
かなしみのような
その境目で
私が寂しがっていようなどとは
思っていないかも知れない ....
窓の外は雨あがりの道端に
もう夏が振り向きもせず
透けた背中をみせている
昨晩干した洗濯物の柔軟剤が香る室内で
好きな音楽を聴きながら
刻み始めるキャベツ
レッ ....
昨日の夕方
毛虫が落っこちてきたら嫌だなと思って
茂る枝の下を避けて立ち
青信号を待った
公園の桜の木
毎年春に花雲を愛でて
木は すっかり街中で溶け込んだ住人
だ ....
パサパサの餌をたべて
噛み砕けども詩にはならず
烏輪の光を受ける郷も今宵、雲裏から出ぬ草はらで
落ちてるひらがなを拾いあつめて
ぴん とお耳を立ててみる
霧が匂う
隠された風景の先を見ている
霧はたえず
その気配でただようしかなく
歩み出れば崖っぷちに咲く野の花の細い茎を
つかむような愛ならば
もはや私に
緑なき ....
雲よりも
高いところの虚ろな光
欠けた兎影に 目を凝らす
背後で、製紙工場の正門から細い通りへ出る
大型トラックのタイヤが路面に擦れる
緑色の金網が張られたフェンス越しに ....
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