すべてのおすすめ
白いシャツを着せられていた
脱ぐことも赦されなかった、そのシャツを
声を発するごとに
胸の真ん中についた、赤いしみ
どんどん大きくなっていく、赤いしみ
(人とすれ違う ....
母を乗せたのぼりの電車
母を乗せたのぼりのタクシー
ペースメーカーの電池は音もなく 擦り切れて
障碍者手帳と交付されたタクシーの補助券は
どんどんなくなり
彼女はもう どこにも行 ....
晴れた日の会場内に 用意された百脚の椅子
来賓者、関係者、招待者、出席者、
名簿に記載された ずらりと連なる固有名詞
司会者は叫ぶ
(百人満席、晴れた日に、)
新聞は語る ....
小さな町は大きな街に憧れて
いつも大きな街の姿をテレビで見ていた
小さな町は大きな街が大好きだったけど
大きな街に行くと自分がいかに
小さな町であるか知ってしまうことを恐れて ....
あなた方の死骸を埋めると 私が芽を出して育っていく
アイ、の呪いはコトバと声を包んで あなた方を肥やしにどんどん伸びる
声が子守歌に変わる夜
初めて骸の種となったあなた方に 向き合う ....
もう、疲れてしまった。
美しいものは、等しくコトバにできない、ことや、
瞼を瞑ることでしか、思い出せないと言うことを、
眠らない心が捉えてしまったのだ。
夕焼けすら 同じように見え ....
メガネをかけた店員が私を緑のサツマイモだと言った
もう一人の店員は私のことを赤いキュウリだと言った
どの棚にも私の居場所はなく、
北海道の男爵やクイーンが
同じ棚には並びたくない、と言 ....
{引用=たくらみを実らせた花はもう、少女ではない
女になれば脆弱な季節から嫉妬だけを学ぶ
かなしみ、は 夜を壊し牙をむく
いつも、淋しい姿で佇んではいない、と
教えてくれた あなたの沈黙は深く ....
西日のツンと熱さが刺さる土の上に
父の遺骨は 埋められた
真新しい俗名の墓石は それぞれの線香の煙に巻かれながら
親族が帰るまで夕暮れの空を 独りで支えなければ 誰一人として
家に帰る ....