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久々に一人で実家に帰る、晩
何処か名残り惜しく
幼い息子の肩を抱きつつ
嫁さんに少々草臥れた足裏を揉んでもらう。
*
久々におふくろの味で腹を満たした、朝
何処か名残り惜しく
....
私は、白波。
晴天の大海で、一人
遠くから呼ぶ
あの太陽
の熱い眼差しを身に受けて、踊り上がる
私は、白波。
瞬時に見渡す、海面、あちらこちら
それぞれの、個性の、白波等
それぞれ ....
横浜・野毛の老舗「村田屋」の座敷にて
鰯丼の傍らに、置いた
味噌汁の真ん中に
豆腐がひとつ、浮いている
(天井のらんぷを、小さく映し)
澱んだ味噌汁の、只中に
くっきりと、立体的に ....
俺は、風を探している。
退屈極まり無い日々を
ぶおおおうっと一掃する、一陣の風を。
――それは、生きてる本を
開いた頁のすき間から、吹き
――それは、熱いライブを
終えた無人の ....
手を広げ…じっとみつめてごらん
言語ではない太古の温もりを
こちらに語りかける
生きものに見えてくる
夜――母が机にそっと置いた麦酒を呑み
頬を赤らめた兄はじっ…と目を閉じ
向かいの席の母もまた、{ルビ面=おも}を上げ
兄を見つつも…掌で涙を隠し
傍らに坐る、幼い私は泣くまじと
兄を ....
あばずれ女が10万ルーブルの札束を
暖炉の炎に、投げ込んだ。
自らの純愛を置き去りに
去りゆこうとする女の狂った有様に
身を震わせる白痴の男の
頬にはひと筋の涙が伝い…
暖炉の周囲 ....
出先の喫茶店で「童心」がお題の
コラムを書いてから、自宅のママに電話した。
――じゃあ、読むよ。
――今、周に聞かせるからちょっと待って。
ママが携帯電話の音量をあげてから
できたて ....
昔々…伯父さんの家に遊びにいくといつも、畳の
部屋に這いつくばって、すりすりすり…と無我の
境地の音を立て、何者かが憑り依った後ろ姿で、
すりすり…と和紙を摩る毎に段々…深みある旅人
の自画像 ....