もうそこに 映る事無く 古道具屋に
売られて行くの 三面鏡
正面より左角度横顔の すまし顔
見ては微笑む 私の髪は
ちょうど腰のあたり
窓辺から光り差して 少し赤 ....
互いに無関心
けれど本当は
いたみは はんぷく
ことばとは うらはらな
ひていが ほしくて
「そうだよね」が ひどく いたい
「ああ、やっぱり」が ひどく しみる
ドトールで女と待ち合わせ
といっても携帯時代
正確にはドトールで女の連絡を待っていたが
まるで、連絡が来ない
ドトール地下のライブハウスでは
メロコアバンドが「青春」について叫んでい ....
水曜日の、朝
雨の、海
ここは、底。
数え切れない水曜日が
既に溢れはじめてしまって
数え切れない雨として
朝を打ち消している
あらゆる残り香が
あ、香りではなくな ....
おなかが痛くなって
道のはじっこにしゃがんでいたら
知らないお兄さんがそばにきて
だいじょうぶ?
と聞いてくれた
わたしは顔を上げた
なんと言おうか迷ったけれど
「おなかが痛いんです」と ....
結局僕らは、手を繋ぐことも恐れていたから、きっと、人間なんて外枠は、どうでもよかったんだね。感覚で繋がる、思いは繋がっている。「繋がる」なんて言葉の嘘を、僕らはとうに見破っていた。不器 ....
夕暮れの後の雨はどこも優しい
平静な音が響いて
空間が深まっていく、窓の外
思い返すほどに
心落ち着いていく
世界は円になっている
そんな
額面通りにはいかないらしい
言葉が繰 ....
ドアが開くような音がすると
誰かが勢いよく飛び出していく
真っ直ぐに見せている道は
静かに湾曲していて
遠くの方で反射して、光が
不透明な景色を作っている
霧に浮かんでいる街で
探し ....
部屋にばかり詰めていたので
気分転換にちいさな125cc のバイクに乗ってきた
新興郊外都市 背高のっぽのビルが立ち上り
丘の上を占めていた 大きなマンションと
....
一度しか刺せないとしたら、誰を刺す?
助手席で
彼女は妖しく微笑む
一度だけなら、いつまで取っておく?
ちょっと待って
いま両手がふさがっているんだ
前輪がひとつ足りな ....
アタシのしっぽを握る手
を辿って一歩また一歩近づいていく
ごとに強弱のリズムが狂う
から肩のラインがみっともなく震えて
しまうし見抜かれているアタシ
の幼いところを知り尽くしている
くせに ....
内から外へ
広がる気持ちの真ん中へ
水色のレンズをつけたまま
私は一人で立ち尽くす
うらうらとつもった心のチリを
動かせる事のない
非力な自分
描く放物線も心なしか弱く
そ ....
どうしても空を飛びたいらしいので
象が踏んでも割れない筆箱をあげると
「二郎さーん!」と言って地面に投げつけた
私は冷や汗をかきながら
「確かに弟ができたら二郎と名付けるつもりでした」
....
学生服のセーターは そっと息をかけるほど 白く染まるそんな気がした
身も心も白いまま 私は15を迎えたあの日 赤い蝶がまいおりて
私のドレスを大きく濡らした 君の指はふるえたまんま
....
高速道路の下で猫が一匹死んでいたから
ラムネ水の泡はあふれて
誰かの右腕に落ちた
こんなときに聞こえる音は
芯をえぐられた風の音で
必要な季節を呼んで
....
そら、なのか
から、なのか
どっちでもいいけど
「宙」と書いて「そら」と読ませるよりも
「空」と書いてなんと読むのかわからない
そんな曖昧さがわたしはすき
そら、だったのか ....
気がついたら雨が降り出していました
三十号が上陸しました
って
季節はずれだけど今年は特にしょうがないでしょう
って
聞こえたから、しょうがないでしょう
って
言うしかないんです
....
口裂け女の噂を広めた女性は口が裂けていた
公衆電話はワープ装置としても使われている
ティッシュペーパーの72組目は他と質が違う
夜が訪れると同時に太陽は体育座りをして行儀よく次の ....
晴れた空は、あまりに眩しくきれいだ
幼い頃、一番欲しいものはなあに?と問われて
そら とは答えられず
むきかごーぶつ と答えた
(空は大きすぎて僕のおもちゃ箱には入らないとわかっていたから ....
私は踊る郵便屋
幸せのお手紙をみんなに届ける
悲しいお手紙は川に捨てちゃう
ホップ・ステップ・サイドサイド・ジャ〜ンプ・ダウン
さあ
幸せのお手紙よ
でも
私の心は少し寂しい ....
{ルビ医師=いし}らバス{ルビ停=てい}にいてすばらしい
{ルビ酸欠=さんけつ}さん{ルビ診察検査=しんさつけんさ}
{ルビ残念捻挫=ざんねんねんざ}
インテリ{ルビ庵癌=あんがん}あり{ルビ転 ....
ひとつだけ
たくさん
あげるから
ひとつだけ
たくさん
たべてね
おねがいね。
ほら、小型偵察隊が来た
黒い6本足と大きなアゴ 列をなしてやってくるよ
大変、飛行部隊もやって来た
すごいうなり声上げて私達の上を飛び回ってる
紫外線のせいか、冷たい風のせいか ....
写真をとるとき、
かならず右かた側が少しさがっており
横にならんだ左かたにふれ。
そのくせが
どうにもゆかいで。
どうやらおまえのたましいは
すこし ....
鏡にそっと、右手を、ついて
じいと覗き込む、あたしの顔
左、右、あたしにふたつ、目、目
やさしいことがたくさんつまった左目が
いけないことを見下ろして、目、目
それよりもほんの少しだけ下にあ ....
あたしはね。
あたしは、本当は、こんなコト言いたくないんだよ。
本当は、もっと、綺麗なものを、綺麗な言葉を、言いたい。
だけど、綺麗なものが逃げていくんだろうか、
綺麗なものな ....
女を好きかもしれない恐怖
愛して良いのかという不安
キスのその味は上品な香り
自分より小さい肩を抱き寄せる感覚
明日もそこにいるこの子と
明日も明後日もここにいる自分
どうしたらいい
ど ....
僕が僕になるずっと前から
変わらずそこにいた遊園地が僕に「明日死ぬ」と呟いた
それは近所にあるにもかかわらず一度も行ったことのない
僕に対する最後の手段だったのかもしれないけど
それでも迷って ....
9月11日
学校帰りの地下鉄はいつも
ぎゅうぎゅうでみんな疲れてて きらいだ
でもそれが今日は少しやわらかな
そう、土曜日
休日の人もいるのだ
休日の人も
真実子ちゃん
こ ....
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