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夕暮れだろうか、明け方だろうか。
深い森の中に薄紫色の光が差している。
薄い霧のかかるどこか懐かしい空間で
いくつもの死と生命の誕生とが
上品な絹のように織り交ぜになっている。
遠くか ....
心はいつも籠の中。
苦しさ紛れの言葉遊び。
朝方の霧雨に煙る旅情。
夜はまだ先。
渓流の流れに似たひと時。
我が腰の辺りを啄ばむ猛禽。
湖でもがく 浮上の兆し。
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群青色の空高く 浮かんだ月は艶かしくて
女体の中心を穿つ臍のようだ。
月に向かって両手を重ね
ゆっくり優しく愛撫する。
時間をかけて湿った月の柔肌を
私はもう愛さない。
....
芝刈りの最中、可憐に咲いている名も知らぬ花を私は見た。
同僚に聞いても知らぬと言う。
私はその花がどうしようもなく気になったので、
皆の見ていぬうちにこっそりと花を抜き、作業着のポケットに詰 ....
握った手を決して離さないでください。
そこに初めて僕はあなたを感じる事が出来るのです。
握った手を決して離さないでください。
それはゆらゆらと僕を子供に戻すのです。
握った手を決し ....
カラフルな欲望の中から一番鮮やかに見えるものを捨てる。
トーンの重い音楽の銃口をこめかみに当て 弾く。
頭は真っ白になり、口から真っ赤な泡を吐く。
一瞬軽くなった体は宙に浮き、その後いびつな形の ....
夜毎訪れるセピア色の光景にふと吐息を漏らす。
奪われてゆく時間の中では全ての音色が透明だ。
物語は夢と現の境を行き来して
真夜中の扉をけたたましくノックする。
頭の中から幾つ ....