石灰岩の岬で その木は咲いていた
岩礁を咀嚼する波しぶきで、真夏だというのに咲いていた 桜の木
あの花は きっと永久の入り口を見たのだ
桜は黄泉を観ていた
泣いている人々のことは ....
空がこんなに青いのに
死にたいと嘆く 冷蔵庫101号室に住んでいるレモンなんてジュースにして
空のそらぞらしさなんて
御構い無しに たわわに実った 金柑の実を小鳥のようについばんで
よもぎのパ ....
わが前に雄蝶雌蝶が舞い出でてしきりに舞いてまいてまうなり
数多なるネクタイの中一つだけ欲しいのがあり、見るだけにしておく
エホバと妻とわたし
夜の星空を眺め
その空の遠い彼方
エホバ神のみ座がある
妻と二人
食卓に着き
神の御名たたえるとき
胸の中に涌く喜び
小声で、聖書を読み
神の御名 ....
有事に無力感しか抱けず
悔し涙を流すのは嫌
「馬鹿」上等
むしろ馬鹿でいい
常日頃から小さな力を蓄える
OBが次々と狼煙(のろし)をあげる
戦争は反対
生きる人の ....
記憶にはもう無い日々が朝焼けの目眩の底に浮かんで消えた
静かな庭に
陽炎が立っている
そのほどけた輪郭は
今はいない人の
記憶に似ている
不安が
忘れていた不安を
呼び寄せる
花柚子を貰った
実家のお向かいの家で
段ボール箱3箱も採れた内
実家でいただき、
そこから、
わたしも鍋いっぱい分けて貰った
柚子は好き
柚子胡椒も好き
柚 ....
5歳の野原に
少年をひとり
おきざりにしてきた
今も夢に見る
あれは
世界の果てまで
走って行くはずだった真昼
やけるような緑と
汗と言う名の夏が
身体にべったりはりつい ....
頭まで毛布を被り
丸めた背中の向こう岸に
たまった呼吸の骸が、たからもの
眠りはぬくもりに引きずられてくると
信じて布団にもぐりこむ
あなたをここに押しこめたい
寝息の小川を
すい、 ....
野を駆ける風をその髪に
茜色の夕焼けをその頬に
天の川を両の手に
卯月の雨を一粒残らず集めたら
桜吹雪に変えて見せましょう
知りえる限りの美しさを散りばめて
胃袋に詰めこむものは
ジャンクであれば、あるほどいい
水分ですべてを流しこめば
震える指をのどの奥に
便器にかじりつくように
ひざまずいて
溢れ出る吐瀉物に
願いを託す
ちいさくな ....