すべてのおすすめ
何度も何度も触れてくるのに
けして苦しくなることのない
数え切れぬ手 ふたつの手
近づき 重なり
離れゆく手
離れ 離れて
響きわたる手
さくさくと向かい風
にじむ ....
つめたいあおぞらの岸堤では、
薄色の私に関する波紋が水面で揺れていましたが、
十四歳の虚無にとって、ひややかな書籍など、
朝と草と自転車とほたるにすぎませんでした。
森をあまく満たすぶどうは音 ....
ことばの夢の季節のような図鑑のなかで
あしたの少女たちが眠っています。
かすかなひびきがきこえます。
青い虫の名前のようにそっとゆれてることにしましょう。
ラードまみれの路上で
不自然に呼吸を操る君の濡れた貝殻
往来する車の振動に身体を刻み下を向く
夜ごと溶かせない太陽に
また明けてしまう日々に
玩具の馬さえ乗りこなせない毎日
君は
....
ビニルクロスが剥れたすきま 小さな蜘蛛と曳きはじめる
すこしばかり艶やか 折り戸のガラス エッチングされはじめたあたり
新聞屋は遠ざかる 本が押した頬のあたり 浅い皺に ....
残念でした。もう少しだったんですけどね。ほら、あなたの回答にはひどくムラがあるのです」
市役所が募集した屠殺係の試験に落ちた
受験者はどれくらいいるだろう
市民グランドに学校机が6つ
その ....
青々とした
ススキが
手を触れれば
切れそうなくらい
猫を拾ったので
埋めた
分解者が
いくら細かくしようとも
ある一定のレベル以上は
分つことなど
不可能なように
全て ....
スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう ....
あなたがいま
火をつけたたばこには
着火口から1.2mmのところに
680度の熱を関知すると
大爆発を起こす薬品がふくまれています
300円傘は
雨よけにもなりませんし
槍よけにもな ....
あいつは俺の噂話をして
俺から片腕を切り落とされた
交差点の銀行は
何度も合併して名前を変えた
黒塗りのタクシーが客待ちして
運転手が鼻毛をむし ....
あばら骨を浮き立たせたまま
空はどこへ埋まろうとするのか
墓地の土は硬すぎるのに
操車場の跡は狭すぎるのに
まわりながら燃えあがるかたちを
位置も時間も持たないものが
....
恋で埋める空き地を
日が差さないとぼくは文句を言った
音楽が流れる川のないところで
水浸しになるだろぼくは手紙を送った
物語の中にいるこれは嘘ですぼくは日記に記し ....
塗り絵に多くの
期待をしては
いけませんよ
消えそうな手で
果てるまで
そういって命を乞うた
天花粉のけむり舞う
七百十号室は
発疹の若い火照り
八朔を剥く指も
ここでは何 ....
また まだ
ほらまた
同じように
同じこと
同じことば
同じことばかり
またかけたもう
かけた
ほらまたかけたし
にかけのことばで
もう忘れて
忘れている
ぐるぐるのロ ....
あいにくと
今朝は
雲母の雨
レイゾウコに
証券市場線の傾きで
保存されたキャベツが
笑う
そう
どうでも
いいことだった
遠いNの遠足に
かかる雲のあいま
母さん ....
「担当の岩崎です」「はい」「どうぞ」「石川県金沢市の河北郡で」「河北郡は」「はい?」「かほく市になりましたが」「そうですか」「そうです」「どうしてですか」「合併したからではないでしょうか」「合併」「合 ....
メアリーは言った
「いつまでも一緒よ」
でも彼女はとっくに
土の下
おお おお
彼女はとっくに
おさらばだ
キング氏も言った
「死ぬときは一緒」
でも彼は今年
83
おお お ....
夏の玉蜀黍畑が夏に朽ち
私は鼓動を探ってうずくまった
途方も無い大気の、余りの光、余りの熱
玉蜀黍の呼吸には錆びて乾いた砂が混じり始め
焦がれるように焦げながら体躯は空に触れた
....
歪みきった顔が映ってる鏡のそばから
雨の音が聞こえる
誰にも気づかれないドアが
回転してる
最後の階段だけない
から
おれは右足を開封して左手で閉じた
....
中森明菜からもらった手紙をてんぷら火災の炎で燃やした
セルジオ越後は別に悪い人間じゃないと
パートタイマー美男子がカラオケの合間につぶやいた
おっぱいは複数
....
翳りはじめた葉の陰でねむる日の
腕をのばし
触れた輪郭を
最初のものとして、覚えておこう
たゆたう
まだ眼をあけてはいけない
つたい流れてくる感触は、にぶい冷たさにふるえ
昨夜、飲み ....
足首を辿って
くるぶしに座って休憩したら
かかとの頭が見えてきた
地図
それからブルーの手紙も
鍵色のドライフラワーも
あの岩砂漠で
すべての証を
かかとに集めて
炎で燃 ....
誰の所有でもない
扇風機が回っている
建売の新築住宅の壁にこびりついた
電信柱の影は
皮膚病
二階の窒息のベランダに干された
布団は
....
書物の陳列の疲労の飽和した本棚は
朝方には回復を諦め軋みもしなかった
テーブルクロスのうつ伏せた脱力の背にある
アルコールの抜け殻の横倒しの唇は投げ遣りに香った
そっと、突き倒した ....
鴉のはばたきに覆われて
夜の鐘は少しだけ揺れる
刃の音 鋼の音
夏とともに終わる音
音はただ音としてはじまり
やがて静かに変わってゆく
前転する光と
前転する黒羽が ....
滑り台の上で滑り出せずにいる
後ずさることも出来ずにいる
飛行機が滑り込んでくる
地面すれすれ
空気が摩擦して
夏が濃くなる
毎日を鏡に映してみても
逆さになる他は何も変わらない
....
雨曝す心ひとつ
待つ身の程の隅々へ
ゆっくりと
行き渡るのが
夜の毒だから
ケチャップの夜は
泣き止まず
ただだらしない雨を
ひそかに運ぶ
可愛いひとを
手品の箱に
詰め ....
クーラーが冷やかす演劇的な鼻風邪。の、中での諸々。ぼくらは数えてしまうのに、どうやらこれは速度のようです。録画して再生するやつら尻目に、宣言してチェンジ、チェンジ。「急激に7〜8割忘れ、そして記憶に残 ....
きみとぼくは
泣きながら
ダンスを踊り
磁石の月に
吸い寄せられる
空の終わりに
ぼくの汚れた靴と
きみの破れた
ドレスの裾が
....
俺はグレープフルーツジュースを
飲み干す。
頭上の空に半分の月が
まぬけに浮かび上がっていて
横を振り向くと
夕日が海に沈もうとしていた。
グレープフルー ....
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