「わたくし」がいつもうるさい主語だから野花は咲いて名もなく揺れる
気をつけろ死の面さらす詩行から蒼い樹液がぽたぽた垂れて
紫陽花の枯れた姿は傷ましいさっさと首を落として欲しい
かくれ ....
深刻ではなく 淋しい瞳をもった
サーカスのピエロ
ぼく きっと 透きとおった
この時代の住民にちがいない
古代マンモスのふかい皺をもった
象たちが踊り 踊らされる
過 ....
クール宅急便が夏をのせてはしりさってゆくよ
(運転手はたおやかな秋という名をもち
いつのまに曼珠沙華がスっクとのびたんだろう
(花は放射線状に巻かれ彼岸という中心 ....
幼い日
ふたりで日向ぼっこをしながら
影をみていた
ぼくの黒い指先が
少女の頬に触れようとする
と 触れるその直前で
影だけがふやっと膨らんで
ぼくより先 少女に ....
砂漠の向こうでランボーが
蜃気楼に投網を打っている
やつめうなぎが川底ではぜ
永遠の焦げる臭いがすこしする
酸素漂白濾紙をおりまげて
にがい液体にわたしを落とし ....
水の{ルビ簾=すだれ}がそこかしこに垂れ下がっている夏の部屋に居て、ぼくはもうあの郵便配達夫が来ないことを知っている。ぼくの胸のなかには白い綿毛のようなほわほわした生命体がいつも棲みつ ....
優雅なるおのが自虐の洗礼に母性あなたは鏡のごとく
聖典を真夜にひらけば一本のわが少年の髪ユダにありき
さようなら僕のジュラ紀よ骨格の恐竜だけが透明だった
一本の濃きまみどりの樹と生れ ....
そうして八月がやって来た
濡れた髪は山脈のゆるい傾斜をなぞるように戦ぎ
大地の荒々しい脈動を伝える両脚は
透徹した眼をもって立つことを求められていた
ぬるい渓流を走るわたしの血管
....
一篇の詩をつづりながら
多くの迷い道を選びきれないでいる
夜 飼い猫の眼が光る
かれも ぼくをみつめている
散乱した独りずまいの部屋に
椅子がない
神棚のみずが ....
にゃんこホアキン
きみの硬直した屍体はぼくを悲しませた
にゃんこホアキン
ふさふさした薄茶のふさ毛とふとい尻尾
ふた色に変わる不可思議な鳴き声
覚えているよ にゃんこホアキ ....
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