「夕凪」

遠い昔
粉々になった水平線が
白い海鳥に姿をかえました

白い海鳥の
さいごの羽ばたきで
のばされた夕凪で
ひきよせられる
白い骨



「内緒」

わたし ....
しぶきをかけぬける
ふくらはぎの
まあるい
着水点

夏の鼓膜に
そっと
折りかさなる
六月の
ふやけた骨格を
並べかえる

君は
雨だれに
擬態したまま
あじさいの葉脈 ....
「水の中の六月」

錆びた鉄の味のする手摺を伝って
空っぽの水槽を満たそうとする早朝
浸水された浴槽の縁を滑らないよう歩く
生まれた時から水に溢れていた




「駆け落ち」

 ....
やれやれ 膝が痛むねぇ
この頃 ひどい神経痛
ひと言ふた言 つぶやいて
ゆっくり ゆっくり
立ちあがる

泣きじゃくる
みどり児の背中を
二度三度
撫ぜる手のひら
ほんのわずか
 ....
水の匂いのする
あなたの
指先の和音で
おどりだす
初夏の背表紙は
水溶性の文字たちの
ぽつぽつと吐き出す気泡で綴じられてゆく


垂直に
落ちてくる六月の
浸透してゆく
素直 ....
「目の前は、海。」

青の端で青を聴く
潮だまり おどる魚影 水をよぶ銀鱗

目をとじて
うまれたばかりの水をくぐる
五月のさきにある
海の縁で





「あおあらし ....


夏のはじまりの声に
奪われた鼓膜は
透明の
セロファンに覆われた
巻貝の中で浮遊する



白い花びらの波に
さらわれた遠い渚で
掠めとられたくるぶし は
薄暑の縁ど ....
 

緑の斜面で
息つぎしながら
遠くはなれて 青いしんこきゅう
くりかえすたび
さざ波
うまれては きえてゆく



五月の水際に よりそう
ゆるやかな
春の終わりを編みこ ....
一.

雨あがりの きみの靴は
つま先が いつも
虹のうまれる方角を ながめている



二.

黄のバイエルを
途中でなげだしてしまった
きみの
メゾピアノで吐く息が
ス ....
湿り気を帯びた水曜日の午後
回し忘れた回覧板の中で
『実りある都市計画~その概要』のパンフレットが
気まずい折り目をちらつかせながら
遅々として進まない事業の行く末を気に病んでいる

テー ....
1.

朝と
朝を灯す鳥たちと
団欒
指さきで契約する
(チチチ(チチ
(チ



2.

だらん と
のびた舌
その先にある
春のかたちにくりぬかれた
水平線

 ....
・ 
揮発性の朝の
つめたい胎盤の上で
藤の花房が ゆれている



風にさらわれて
透けてゆく春の上澄みは
背中から咲いてゆく
焦点のあわない花の群れの
ひそやかな発声で
 ....
黄昏た窓枠を眺めている
はちみつ色に細める
瞳の中には
きっと琥珀が ねむっている



机の上の
コンパスの針で刻まれた
しらない時代の落書きを
なぞる白い指はこびで
背 ....
雨は
大丈夫だから
たぶん
このまま





きみと 花の咲くおとを
ききたいな

ふたりで
おだやかな骨格をもつ
春の日だまりに なりたいな

ささやかな い ....
薔薇の蕾をなぞる指先で
あなたは
わたしの静脈の中の
青い花びらを
一枚一枚
ていねいに燃やす


薄く伸ばされた
午後のページをめくる
白い重なりは
丸みを帯びた雨の切っ先 ....
しののめ
泣きやんだ雨と別れて
焦げ目のついたトーストの耳を
甘噛みする
(余韻だけの部屋)

逆さまに沈む 朝の底辺に
ひっそり と
しがみついている
(ちいさく おどる ひか ....
発光する
旅人
のような
まなうらに
堆積する
ちいさな花を
焼べながら
浮遊する
小鳥の声色で
女の子の群れが
葡萄水をまきちらし
りるりるりる

目のまえを
よこ ....
春のみちしるべが
ぼんやりと
さくらいろにほどけて
くるり

かすかに温む指さきを
ひきしおの隙間に
おきわすれ
どこへゆくのか
しおさい

水平線の午睡
波の ....
木蓮の花びらいちまい落ちる音ささやかな夜のまばたきに似て


ぼんやりとスピカまでのびるきみの背を「ち よ こ れ い と」でかけあがる夜


ひそやかな春のそくどでしのびこみきみ ....
凍土の独白 そのあとさき
訪れる安寧の息づかいは
無色 無音の
不可視の原野に
手放しで放り出された
あっけない夕暮れなのかも知れません

色の無い花びらの
おどる薄暮の
ながれ ....
佐東(50)
タイトル カテゴリ Point 日付
引き潮/あとさき自由詩12*13/6/26 15:56
海の六月自由詩8*13/6/20 10:42
六月の朝に寄せて自由詩11*13/6/19 10:29
雨の日自由詩3*13/6/18 19:08
水辺で暮す自由詩14*13/6/17 19:16
五月/短詩群自由詩2*13/5/8 13:22
潮音、遥か自由詩6*13/5/6 21:27
海の五月自由詩4*13/5/3 7:51
初恋自由詩11*13/4/21 10:47
at the zoo自由詩4*13/4/17 23:57
朝のすきまにはさまっていたクリアファイル自由詩3*13/4/17 11:56
春の残り香自由詩4*13/4/16 12:18
かたおもい自由詩4*13/4/13 11:46
春の余白自由詩3*13/4/12 11:46
春の午後自由詩4*13/4/11 10:43
朝ぼらけ自由詩2*13/4/10 8:35
cosmos自由詩2*13/4/5 16:21
海の四月自由詩8*13/4/4 16:15
春のそくど短歌3*13/4/3 23:29
風を編む。自由詩3*13/4/3 15:54

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