先生が、いい子いい子言って
わたしのあたまをなでる。
土のにおいのする、ざらついた手のひらが
高いところから降りてきて
ちから強く、あたまをなでる。

いい子いい子、土人形よろしく捏ねられ ....
ただ恋を占うために
花弁を毟られた花だって
きっと種を抱(いだ)いてみたかった、にちがいない
なんて思う
のは、身勝手!

わたしは花じゃないので
花の ....
舟を漕ぐ。
昏い水面。
舳先の灯りに、身をよじるさざ波。

ぐっと櫂を引くと、私とおなじ力で、圧し帰してくる
水の確かな、手応え。

立ちこめるミルクの霧を透かしても
目指す岸辺がどこ ....
いやあね、なんて こどものときには 滑稽で
できなかった 世間話のあと。

誰にもないしょで
ふわふわと風に揺れ 儚げな 白地にうすみどり小花模様のスカートを
勇ましくひるがえし
木に登る ....
昨日買った文庫本
電車内で 読んでたら
意外なくらい するすると進む目。
逸るのではなく ただするすると。
奇妙な感じ。

そうだ!
デジャヴだ!
前にも読んだ。
ひとから借りて。
 ....
目をとじれば ただの暗闇
では なかった…!

目蓋のうら
そこは みずうみ。
湖面に さまざま浮かぶものあり
しぃんと なにひとつ浮かんでこない 凪ぎの日があり
あらしがきて 大荒れの ....
「赤ちゃんは
この世に産まれたのが 苦しくて 怖くて 泣くのです」
と誰かが言いました。

笑わせないでください。

産まれたばかりの赤ちゃんは まだこの世なんて知らないのです。
あの ....
道を歩いていて
右隣のひとも
左隣のひとも
前も後ろも
みんながいっせいに駆け出したら
わたしもまた、わけもわからず、走り出すのだろうか
行き先もしらず、目的もしらず
押し流され、ばたば ....
赤ちゃんの髪の毛のように頼りなく
やわらかい抱擁に
「あい」というなまえをつけてみるこころみ。

おずおずとしたやさしい腕の持ち主を、見上げる。
いちねんまえの初夏の木陰で、透明な涙が光って ....
瘤だらけの罪悪感を、家に置いてけぼりに
まひるの電車にゆられ
晴れた空が眉間に滴り落ちるばしょにいく


宇宙の滴がX線になってぼくを透過して
きっとどっかたいないの、奥の方に引っかかった ....
「ガチで」と言うのは
玄関先で
火打石を打ち鳴らす音に似ている。
熱がない。
みぞおちのうえ辺りを、すぅすぅと風が通り
だいじな「おくそこ」が冷えきってる。

熱がなく
あまりに冷えているので
ぼくは永久凍土で冬眠にはいってしまう。

一千万年あとに ....
胸骨のなかが冷え込むと
やはらかき草のうへに横たはり
全身の痛点を耳にして
よみへ続く覆水の
砂礫に混じる星屑が
ふれ合う金属的な響き
を聴きつつねむる。

*

その響きは
地 ....
種々(くさぐさ)の根に吸い上げられる水の轟音。
あなたのその脚は、根。土に喰い込んだ根。
その根はあなたの地上の背丈よりずっと、地下高くひろがり、吸い上げている。

根の国の暗渠には、歌が ....
どこもかしこも駅なのです。通過点で、とどまれない。
数瞬、隣の人の肩とふれ、見知らぬ生活の匂いと、わたしの皮膚細胞とが、ほのかに混じる。それは、一個体として存在する孤独の、群れへの譲歩。
わたしの ....
あなたがあなただと、わたしに知らしめるもの
それはなに?

もし、
あなたの貌かたちが突然
変わってしまったら
わたしはまったく気づかないのだろうか。
あなたがわたしを見つめても、少々の ....
あなたのせい
と、言わないのは やさしさ
と、じぶんのおへそに
言い聞かせていた
けれど
これは プライド。
わたしがわたしでわたしの重みに耐えるため。

**

日付が変わる直前 ....
したを向いていると
ぼたり、ぼたり、服に
投下されていく、くろい染み。
先ほどまで、ぼくのたいないにあったイオンと水分。

ここは電車のなか。
花粉症に紛れて
涙腺が稼働しているのを、こ ....
まひる、白い、アスファルトのうえ
くるくるまわり、昇っていくむしの群れ。
らせんを描き、そらへはしごをかけていく。
きっと遥かな静寂に届くまで(たとえば、海王星の近く、とか)。

暢気に渦巻 ....
春の日の午後
かわいた洗濯もの
藍いろのセーターを抱きしめたとき
はっとした。

ぼくの、鼻腔のおく、ちくちくとはじける火花
目のおく、熱がひろがる。
あなたの肩の、匂いがしたものだから ....
玄関であなたの手を握り
じっと、見つめて「じゃあね」って
言う。

そとは風で荒れ
そらはひっくり返ろうとしている。
世界は脱皮をしようとしている。

脱皮する春の皮膚へ
あなたを見 ....
背筋の皮いちまい、書き割り背負って
動くうで。

きびきびとした足音。
ひるがえる制服の裾。
ロボットの正確さ。
薬品のにおい、エメラルドの泡。

社会的な視線に規定される ....
双葉よ。
どうか芽吹いて。
いまは雪の下
凍えた土で、ちからを溜めてまっている。

地上への好奇心をもっておいで。
だいじょうぶ、心配しないで。
茎がひねくれても、添え木をあてます。
 ....
運命線がないんだね
ってだいすきなあなたに
言われたので
なんだか、無性にうれしい。

つまるところ
わたしの指には赤い糸がないので
わたしとあなたは運命じゃないし
前世の行いのせいじ ....
あなたのこのみはなんだろう
と、おもいつつ
たまごを割り
しろみ

きみ
にわける
よく冷えた銀色のボオルに、ひしゃげた顔がうつり
かしゃかしゃと、撹拌されていく

こんげつのつ ....
ことばよりさきに
脱ぎ去れない肉体を持って
取り乱す
見上げれば
木漏れ日が
からだを斑に染め
赤と緑に、網膜が灼ける

わたしは、うまれてしまったのだ
あかくふよふ ....
あなたの胸に、耳をつける。
はらはらと
降りつもる、ゆき。
さいげんなく現れる、ぶあつい雪片。
あなたにふれた手のひらが、やはらかく折り重なり
何層にもなってゐる。
ぼくのも、知らないひと ....
凍湖(147)
タイトル カテゴリ Point 日付
わるい子の小道自由詩4*13/6/10 21:18
ツツジの蜜自由詩1+*13/6/10 3:22
舟を漕ぐ自由詩5*13/6/10 2:49
ないしょで木登り自由詩1*13/5/27 16:12
青い表紙の本自由詩7*13/5/24 1:52
目をとじれば自由詩3*13/5/24 0:52
勝利自由詩5*13/5/22 3:11
ノリについて。自由詩3*13/5/20 15:42
はじまりはいつも、はじまりすぎている。自由詩5*13/5/16 17:03
X線自由詩1*13/5/10 13:37
「ガチで」と言うのは自由詩413/5/9 0:38
ここはカフェのソファ。ミルクティーを飲みながら自由詩213/5/9 0:30
全身の痛点を耳にして自由詩413/4/29 21:38
根に吸い上げられる水のはなし自由詩513/4/24 23:57
駅で。自由詩113/4/24 1:17
あなたが蛙になっても自由詩113/4/19 21:46
魚に自由詩413/4/18 0:28
そしてきっと、引きちぎる自由詩213/4/14 16:19
はしごの先へ自由詩313/4/12 19:18
藍いろのセーター自由詩413/4/4 17:30
あなたにつけられた寝癖自由詩413/3/14 15:15
記銘、居続けるために。自由詩413/3/5 0:02
育っていくもの自由詩613/3/2 11:19
運命線がない自由詩5*13/2/26 3:07
チョコレートケーキを焼く自由詩5*13/2/25 14:52
ことばよりさきに自由詩9*13/2/25 12:40
ふる雪のそこに自由詩10*13/2/24 0:41

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