差し出された濡れ衣を
貴方は静かに纏った
濡れ衣は貴方に張り付き
体軸を浮かび上がらせ
その様子を見て
貴方は静かに笑った
菊日和の空の下
貴方は濡れ衣を濡れ衣とせず
その場を後に ....
オリヅルランの
白い筋を滑り落ちて
ぽたり
光が膨張する
鉛筆の先の消しゴムが
手のひらに当たるまで短く
執拗に書き続ける
うしろめたさ
黄色い空の雨
水たまりに流れ着く爪
....
あなたの死体が
打ちあがる入江に
とうとう春が流れ込む
めだかの大群が弧を描き
光と影の
無数のオウトツが
あなたへ向かう
あたたかい波にたゆたい
塩に溶け
無機質な瞳が
....
何度も何度も
すべり降りた
体育館の屋根の上
つばめの弟
やってきて
もう帰ろうか
額をつけた
横断する春の粒子
ずっと眺めていたけれど
探しにいこうか
遠い昔に流された
小さな ....
ねぇきみ大人なんだから
うまくかわして
うまくこなして
生きていかなきゃ
そこに甘さは
必要ない
そうだね
僕は大人になったから
つつかれないように
正しさを身につけ
食べ ....
四角錘の部屋で
夜はどんどん更けていく
手放した触覚は
柱の向こうで遊んでいて
きっと外は数学の森
扉の前の
小さくそろえられた
かささぎの靴
両手にはめて
ひょこひょこ
影をつく ....
いつの間にか
閉じ込められた
白い球体の中で
ごろんごろんと転がってみる
球体も一緒にくるりと回り
なんだか無性に楽しくなる
ごろん ごろん ごろーん
ごろん ごろん ごろーん
目が回 ....
正方形の朝から
君の足の親指の
かたちを思って
ぬるい箸を
握り締めてる
鳥のゆく先
瞳でなぞり
テーブルクロスは
からからに乾き
窓から入る朝露に
小さくすんと鼻が鳴る
朝のダイナー
頬杖ついて
動かない鳩の群れ
眺めてる
夜は明け
挨拶交わし
薄いコーヒー
うずをまく
それでもね
まばたきすれば
浮かんでくるよ
無数のパンジー
新月だ ....
わたしがみたいもの
ちょうど林が重なるとき
岸の端だけ明るいの
わたしがみたいもの
頬のこけた旅人の耳
一年に一度受信できるラジオ
わたしがみたいもの
雨にうたれる阿修羅像
も ....
片方が
不在のときは
レベル上げ
二人そろって
いざボス戦へ
見たいけど
見てはいけない
きまりごと
二人でがまんの
攻略サイト
夜も更け
腹ごしらえに
ラーメン屋
....
冬の桟橋
わたしは車の中で
あなたの後姿を見ていた
象のような冷たいハンドルに
両手を置いて
わたしはあなたを見ていた
ワイパーが
幾度となくわたしに
顔を近づけて
こすれるゴム ....
靴をぬいで
寝転がる
蛍光灯のなか
めいっぱいの電子と
こぼれるストラップ
血管ばかりの
わたしの手
ながめながら
新しい炊飯器で
炊いたお米がたいそうおいしい
笑う母の声 ....
父さんの
大きな椅子に 身をまかせ
交わる線路
眺めてる
小さな列車
僕は乗れない
だけど僕は
トンネルじゃない
小さな列車
本棚のぼる
壁のお面の
瞳がつづく
窓 ....
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