人は泥から作られた時以来帯電している
その上頭蓋骨の中に強力な発電機までこさえてしまった
時には自分でも手を焼くほど過熱するのはそういう訳さ
電気は地中に流すつまりアースすればだいじょうぶだ ....
今日は特別に晴れている訳ではない
相変わらずのうす曇
今日は特に暖かいのでもない
昨日と同じ肌寒
いつもの仕事が目の前にある
一つ一つやるべきことをこなしてゆく
昼になれば同僚 ....
夜中に目が覚めて散歩に行った
黒の画用紙に太めの半月が貼ってある
彼女はふっくらした横顔を向けてこう言った
忘れちゃだめよ あの娘はお嬢様育ちだということを
そうだった 彼女は両親からたっ ....
しょうがないじゃない
わざとじゃない
あの人が悪いのではない
誰のせいでもない
ひとりでにそうなった
春だから
愛でたい
ああよく寝た
こんなに寝たのは久しぶりだ
大きく背伸びをする
薄暗いベッドルームを抜け出し
ひんやりとした大理石の床を踏み
白い柱列を巡って神殿の外に出た
燦燦と降り注ぐ春の陽光が ....
私は精神物理学博士である
本日は私が発明した自己励起システムを紹介しよう
当システムは精神に埋め込んで使用します
今朝はことのほか寒かった
少しくらいは遅れてもいいだろうと思って布団の中で ....
麗 帰って来てくれたんだね
冬の間中街を取り囲んでいた灰色のビル群の向こうに
東京湾が光っている
その上空を飛行機が西に飛んでった
さらにその向こうの木更津の山々には緑が芽生えている
山頂に ....
昔々 男の子はちっちゃな銀の鍵を握り締めて産まれて来ました
可哀想に男の子は15歳になると家を出されるのです
旅してその鍵で開けることのできる唯ひとつの扉を見つけるために
女の子はちっちゃな ....
樹木が地下水を吸い上げる
鴉が獲物を突つく
猫が餌を舐め取る
人が飯を喰らう
あなたは朝ごはんを召し上がりましたか
私はランチを済ませました
みなさん夕ご飯ができました
家族そろ ....
一日の労働を終えて勤務先ビルの最上階休憩室に上がり 西を向いて座る
取り巻く雲の縁を薔薇色に染めながらオレンジ色の太陽が落ちてゆく 
中景には超高層ビル群の黒々としたシルエ ....
もう起きる時間だろう
眠りの中で身体のどこかがそう告げていた
案の定 暫らく経って携帯が鳴る
わかっているよ でももう少し寝ていたい
「いいんじゃない このままで」誘惑者が甘い声で囁く
....
雲の間から少しだけ見える空
その琵琶のような形と水色が湖を想わせる
昨日は雲の勢いに圧されて湖が埋め立てられそうだった
わずかに開いた隙間から射してくる一筋の光に紫煙が渦を巻いて立ち昇る
....
常に集団でいる者よ
世界には君たち以外にも人は暮らしているんだよ
もちろんよくご存知だね でもうざいから無視しとけですか
そんなことより大事なのは仲間と仲良くすること
一人だけ目立たないよ ....
目が覚めたら未だ朝日が昇る前だった
窓を大きく開けて空気を入れ替える
清涼な大気が肌を潤し湿った苔の匂いが頭脳を静めてくれる
美しい夢をみていた
雲の切れ間から射し込む陽光
それを反射し ....
今朝 世界樹が目覚めた
満開となって白い花粉を散らした
世界は彼の逞しい腕に抱かれて白く霞んだ
雪は地面に着床するまでの暫くの間
授かった命に感謝し舞い踊った
雪は大地を受胎させ
....
初めての土地を散歩していた
その墓地はだらだら坂の途中の築地塀の向こうにあった
真新しい卒塔婆が冬の陽光を照り返している
突然 懐かしくなってその場から離れられなくなった
無論そこに我が先 ....
熟練工は風雨から保護するため 心に幻想という漆喰を塗ってくれました
漆喰は乾燥した日が続くとひび割れをおこします そのまま放置すると建物が崩壊してしまいます
冬場は特に危険です 気を付けましょ ....
大洋のなかにぽつんと孤島がある
永い間孤立していた島は海鳥に自分の気持ちを託して遠くの島に遣わした
海鳥は赤い実を啄んで帰って来た
ただそれだけでメッセージは伝わらない
島は自分を掘ることを思 ....
ぼくたちが小学生のころ冬はもっと寒かった
日曜日の朝 二段ベッドの下で寝ている幼い弟の布団に潜り込んで
二人で熊さんごっこをしてしばらく遊ぶ
やがて退屈したぼくは弟を誘って部屋の仕切りに使っ ....
北の海に魚釣りに行った
獲物はリアリティ
真面魚の稚魚を地元ではそう呼んでいる
リアリティは発生初期の胎児の姿をした銀色の魚
餌は人間の体
突堤のブイに腰を下ろしウイスキーを飲む
白い ....
年賀状
父に問われし
頌の読み
誇らしくはあれ
情けなくもあり
夏座敷 
掛軸描く
孤島群
熱き鉱脈
紙背に秘めて
詩人とは言葉を奏でる楽器にすぎない
笛が風の息に共鳴し
琴が大地の震えに共振するように 
詩の女神様が詩人の体を使って
自ずから発した言葉が詩だ
女神様は様々な手段でメッセージ ....
春の気だるい午後僕を眠りに誘おうと暖かく吹いてくる おかげで大学の入学式の記憶は全くない
夏の暑い日家の前の露地に打ち水をすればたちどころに駆けつけ気温を下げるお手伝い
ある秋の日の昼下が ....
夜明け前に外へ出るとそこは舞台裏だった
暗幕に虫が喰ったような穴がポツリポツリとあり 舞台の光が漏れてくる 
華やかな音楽も流れてきた
スター達のダンスショーはどんなに美しいだろう&# ....
今朝の彼女は恥ずかしがり屋さんだった
ドレープをたっぷり使ったグレーのコートから僅かに覗くピンクの素肌が初々しかった
正午が近づいてくると彼女は少しずつ大胆になり ついには厚いコート ....
記憶を失えば 自己証明ができない 
IDとパスワードを忘れたら 私が私だと人が認めてくれない
魂の不滅だの自己の存在理由だのと何世紀も大騒ぎしたあげく このザマか
いや待 ....
今日を生きることに疲れた心を連れて行ってあげる
追憶の岸辺には様々な物が打ち寄せられている
陽に晒されて白く乾いた流木の傍らに
幼稚園に母が持たせてくれた馬車の模様の小さな青いお盆
好きな ....
流れの中に自分を放り込んでみよう 自分が流れそのものになってみよう
流されて行きながら みんなと一体感を味わっていた帰宅難民の夜
大きな災難は人を優しくする
それまでは顔で笑っ ....
良いお日和の冬の日
煙草を買いに家を出た
帰りたいと思ったら そこが故郷だった
僕はもう帰っている
樹々は瑞々しく輝き 鳥達は賑やかにさえずっている 陽は懐かしい温もり
心が和 ....
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