スッピン知ってる俺の時より
帰省の化粧は気合いが入るとか
親戚のおじちゃん、おばちゃんに
「いやぁ〜、アカ抜けたねぇ」と
言われたいためだけに
いつもの百倍厚く塗る

気張って作る西洋料 ....
とんがり帽子の雲が
隊列を組んで流れていく
間もなく夕暮れらしく
どの雲も右半分がオレンジに染まっている

地平までは一本の道が続いているだけで
街どころか木一本生えていない
雲が動いて ....
はるか昔、深海で織られた地層は
湧き上がる二つ対流の狭間で
荒々しくこそぎとられアルプスとなった
そのせめぎあいで
この谷を境に
やむを得ず東日本は南北に向きを変えたという

山中に住む ....
ドアを開けたらまだ真っ暗で
少しめげたけど
新宿行き高速バスの始発は5時3分
元気を出して、君に会いに行こう

バス停は牧場の横、畑の中
途中が手探り足探りの真っ暗で
牛が寝言でいつも驚 ....
色が死んでいく季節の中で
鮮やかに咲く秋の薔薇
何故それほどに、と
数え切れぬほど問われたけれど
同じ夏と冬の狭間でも
身を切られたことがない人たちに
その違いは決して分からない

そ ....
黄昏時、父に手を引かれて
よく見に行った客車区
そこには、旅立ちの準備に忙しい
夜行列車の群れがひしめき合っていた

ベッドメーキングのシーツとカーテン
灯の点った食堂車、純白のテーブルク ....
シャワーが浴びられない
赤の蛇口と青の蛇口を上手に開けないと
熱かったり、冷たかったり
今夜は何べんやってもダメ

シャワーで洗い流したいのに
濡れた髪が心までまとわりついて
上手に蛇口 ....
夜明け前、一本の道を歩いている
ほの暗い中、歩みに合わせて
さまざまなものが流れ来て
そして去っていく

どうしても分からなかった
いさかいの理由
あの時、君が呑みこんだ言葉
失くした ....
慰めの言葉をかき集めるつもりの帰省で
何のことはない
旧い友人たちを精一杯なぐさめる酒を飲んだ
思えば卒業をきっかけに
故郷を彼らに押し付けて
都会へ来た俺はまだ幸せものだったのかもしれない ....
それがコスモスだと気づくまでに
少し時間が必要だった
黄金色と言えばそれまでだけど
一番君にふさわしくない色

去り行く夏を心から惜しみたいから
毅然とした秋の気配に少しでも抗いたいから
 ....
恨み尽くして血に染まり
幽霊花だ、地獄花だと忌み嫌われて
墓場の隅まで追いやられ
歯噛みしながら散る曼珠沙華

お前憎しと今年も咲いて
わが身は白い彼岸花
恨みはいずこ、血の色いずこ
 ....
「昭和三七年竣工」と
定礎された橋のたもとで
その地蔵は天竜川の下流
南に向かい祈っていた

昭和三六年を生き抜いた者も
昭和三六年を言い聞かされた者も
当たり前のように裳を換え
水と ....
風見鶏のように揺れ動く道標
風もここでは澱み、回り
容易にその吹き来る方を
明かそうとしない

作り笑いの意味にこだわり
ただそれだけのきっかけで
旅に出てはみたものの
この道程がただ ....
弄び過ぎたライターの火は
煙草を近づけると消え
明日は
昨日の中に終わっていた

何か伝えなくては と思いながら
言葉が壊れていくのを見つめ
会話はいつも
始める前に途切れていた

 ....
鳶が蒼空に浮いている
巧みに風を孕み
見えない凧糸に操られるように
蒼空に浮いている

瞬間、バランスを崩して墜落する
そして上昇気流
寸分違わず元の位置に戻り
また風を孕む

狩 ....
赤色回転灯が消えて
突然、君の人生が完結した
メジャーとチョークで記録された君のエピローグは
明日は1日だけ、街角の数字になるのかな

君にあこがれて
君に追いつきたくて
怖くて怖くて仕 ....
祖母が倒れた晩
私が寝ていた土蔵の屋根から
人魂が立ったと聞いたのは
ずいぶん後のことだ

祖母のねんねんこの中から
見つめていた風景の記憶は
溶け残る雪がへばりついた
色のない晩冬の ....
田植え前の伊那谷は
全ての田に水が張られ
まるで大きな湖のように
風がきらめきになり遥か渡っていく

いなごを追い、桑の実を摘み
駆け回った子供の頃が懐かしい
濃紺から薄墨へ幾重にも幾重 ....
「もう、ここでお帰り」
路傍の花たちが押しとどめる
この道の遥か彼方、山懐に
確かに桃源郷はあるのだけれど
そこに赴いて何をするの?

昨日と同じ今日
今日と同じ明日
そんな安穏に包ま ....
車窓に悪態をつく
相変わらず灯りも少なく
溢れ出る水蒸気に煙る
陰鬱な故郷

まだ話はついていないと
背中で悪態をつく街を尻目に
「とりあえず帰る」と
戻ってきたけれど

駅から続 ....
豊穣への感謝と
安堵の温もりが
微かに残る
静寂の晩秋

来年もまた
この谷の人々は
ここに集い田を起こし、水口を開け
苗を植えるのだろう

何故と問われれば
きょとんとして
 ....
小さな水口から
待ちかねたように水がほとばしり
山吹とコデマリの花びらを散らして
春色に染めていく

かたわらでは
田植えの準備が賑やかで
初めて田に入る子供が
父から苗をもらっている ....
風吹き渡る
夏の風景を焼き付けるため
できるだけたくさん
花の名前を覚えようと思う

この道を行けばどこの辻に出て
そこには誰が住んでいて
何を思っているのか
そんなことも覚えていよう ....
野の花に
名前などあるはずがないと
思うようなあなたなのに
振り向いて欲しいのは何故

ここにいる、ここにいる、と
声を限りに叫んだとき
それを感じ、立ち止まってくれたのは
「花を愛す ....
西天 龍(54)
タイトル カテゴリ Point 日付
田舎モンの厚塗り自由詩4+09/12/28 1:17
逢魔ヶ刻自由詩6*09/12/24 1:34
時の記憶自由詩9*09/12/2 0:31
君に会いに行こう自由詩6*09/11/6 7:37
秋の薔薇自由詩3*09/11/3 22:56
客車区自由詩5*09/10/25 8:46
シャワー自由詩5*09/10/17 1:31
一本の道自由詩7*09/10/10 12:29
帰省自由詩10*09/9/30 0:58
キバナコスモス自由詩4*09/9/26 22:10
曼珠沙華自由詩6*09/9/26 20:53
三六水害自由詩3*09/9/21 0:48
旅の意味自由詩3*09/9/20 7:36
昨日の中に自由詩7*09/9/19 9:13
とんび自由詩4*09/9/11 11:10
速度自由詩009/8/30 21:05
祖母が倒れた晩自由詩3*09/8/23 22:13
伊那谷自由詩3*09/8/22 8:32
桃源郷自由詩1*09/8/21 7:09
帰還自由詩0*09/8/16 8:41
晩秋自由詩1*09/8/15 8:09
水口自由詩8*09/8/14 7:53
花の名前自由詩3*09/8/14 7:38
花の色自由詩4*09/8/9 11:05

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