悪いけれども
あたしは、好きなものは手に入れるよ
それが許されるのだから
どんな代償を払うことになろうと、
そんなことは知ったことか
――――――― 男の首をほしがるおんなも、
....
夏のそらばかりが 身をせめる
南風の吠ゆる 島の岬に
母のかたみの 赤い櫛で
髪を梳く
罪を乞うでなく
罰をあがなう 身にもあらず
まばゆく うれしそうに
紺碧色に待つ 海 ....
気象台横のごつごつと張り出した岩の上に、よじ登るようにして立ちあがれば、海峡と町の景色が突然足の下にひろがる。そしてその先、海峡の向こうには、白い岩山の山脈がゆったりと雲の下に姿を見せ広々としている ....
出会いは不思議と偶然でも、あの時でなくてもいつかきっとそうなったと思うほど、二人何かに導かれるように知り合った。
大学の図書館で、いくらもない日本語の本の中から、読めそうな小説をさがしている時に ....
マロニエの街路樹が黄葉に色付き、小ぬか雨が毎日のように降り始めると、もう秋冷の季節がやってきていた。
まとわり付くような秋雨の中、娘ははダウンタウンで彼と落ち合うと、一緒に通っている大学からのバ ....
{引用=
光のあふれる
みなもは、しじまの
はぐれた啄木鳥の子どもが、背を黒くし ―●―
オークの幹をつついています
水音にささやかれる樹の間は、
あたたかな池畔のひろがり
....
その髪のすぐ下、右の肩に小さな木の葉のような痣があった。
重は、その痣を見ながら、自分にも葉の形の痣が腿にあったのを思い出し、ほんの一時同じ家系か、一族かそんな血を持つ娘を目にしているよう ....
重も、その娘に手を差し出すと、つとその手を握り締めて暗い廊下を、何人もの男をそうしてきたような慣れたいざない方で部屋へと連れていかれる。
そんな時、言葉など必要ないのが、いまだに英語もまま ....
北の海は凍てつく潮風がのし掛かるような厳しい冬空の下にあった。
北上してきてやっと大洋から入り組んだ細い海峡へ、そして最後に港のある入り江に辿り着いた帆船はどれも内陸からの荷が町まで届いておらず ....
町の誰もがそれを知ったとき、多分、それは、男の女への未練だろうと噂した。
女とその娘がどこに行ったのか、町の誰も知らず、男に聞かれても皆ただ首を振るだけだった。
男は、女が灯台のある島の赤い ....
「そっか。そうだね。見つかっちゃったんだ」
サッカーの練習から帰ってきたHiromiは、Sayoの話を聞くとそれだけ口にしPenneの頭をなでていた。
Sayoは大きな旅行用のバッグを持ってく ....
「ひどい臭い、あなた、部屋で何やってんの。魚の缶詰でも作っているんじゃないでしょうね。ここは、食品工場じゃないんだからね」
そこまで言って、Sayoが口を開き、そこから出される答えを待っている。そ ....
Penneのサポーターが取れるのに、三日かかった。
アザラシの面倒は、夏休み中のHiromiが見てくれたが、週二回あるサッカーの練習に連れて行くわけにもいかず、その間は昼間Sayoがアパートにい ....
部屋に戻るとHiromiは、リビングの三人掛けのカウチに座ってテレビを見ていたが、その横でPenneが大きな潤んだ瞳の顔を上げ、Sayoが部屋に入ってくると、娘と一緒に光沢のある灰色の顔を向けた。
....
Sayoは、マネージャーのスティーブに子供が病気だと言って、二日ほどの休みを取った。
スティーブは、夏の忙しい時期にサーバーやラインのコック達が休むのをひどく嫌がるのは知っていたが、今までろくに ....
リビング・ルームのテーブルには、油まみれの四角いカード・ボードに、ピザが二かけらだけ残り、もう白いチーズを固くしいびつな三角を見せていた。
Hiromiはウォーフでの母親の話を聞くと、そんなこと ....
白いタイルが弾く光の中で海獣は、毛皮に包まれたくたびれたピローに見えた。
他にどこにも連れて行くあてなどなかった。
娘のHiromiは、Sayoがアザラシを背負ってアパートの部屋に戻ってきて ....
ためらうことなく男達の目の前で白いブラウスを脱いだ。白いブラジャーのほっそりとした体に陽がいっそう白く肌に弾けた。
そして膝をおとすと、すぐにそのブラウスをアザラシに着せ始めた。
「スカートも ....
背のほうでどさっと物が投げ出される音がして、続いて、男達の声がした。
「こいつ、どうする」
「生きてんのか?もう、くたばってんだろ」
「さあ、生きてるかもな。海に捨てるしかないだろ」
Sa ....
夜のシフトのサーバー達と入れ替わりに、Sayoは店を出た。
週末のダウンタウンは、車の数がぐっと減っていて、それだけでも何かほっとする。ダウンタウンの西側には入り江があって、それに面する辺りは、 ....
Sayoはもうこんなことを三年もやっていた。
森を越えてやってきたここは、都会の雰囲気のある町で、少なくともダウンタウンには背の高いビルがあり、州立のバスが走り、スーパーマーケットで買い物ができ ....
この店でサーバーの仕事をし始めた頃、最初は、オーダーのとり方もトレーの持ち方さえも戸惑っていたが、それも、すぐ慣れたのは何か水商売の天性があるのかもしれないと、Sayoは思ったりする。昼の仕事は、夜 ....
「アレン、あたしはヴァージンって言ったはず。これはウォッカはいってんじゃないの?客が文句言ってるわ。子供が酔っ払ったって」
Sayoは男に大きな声を張り上げた。店の中は、コンテンポラリーのジャズ・ ....
娘は娘で、やはりそんな母親の影響か教育のもと、元気に何事にもとらわれないそんなおおらかな子に育っていた。やたら頭が良く、勉強などしなくても成績もよく、クラスの担任の若い娘のような先生は、クラスをスキッ ....
女の暮らしは、毎日打ち寄せてくる波のように、変わる事がなかった。
狭い島の単調な暮らしに飽きそうになると、女は海峡を眺めて夢想した。
海峡の向こう側には、隣国の長く横たわる山脈が夏でも銀嶺の ....
いつの間にか海峡と陸を隔てる水平線は確かさを失い、靄の帯を海に広げていた。
海峡の向こうには岩肌をみせる山脈と、その手前には昔は燈台守が住んでいたという岩礁に見まがう小さな島があった。
今、そ ....
空色にそまる
秋の天蓋の幕をあければ
プラタナスの黄葉の並木
衣擦れの人影
{引用=―――――何をかなしんでおるのでしょう。
何を?ばかな 愚かな道化に何がわかるのです。
わかるる ....
黒い空だけが
、羽をひろげられる
あかしだと想ってた
すすけた煉瓦の路地裏
12の時に踊りを ならった ◆―◆―◇
誰もがあきれて 笑っていた
黒煙のあがる炭鉱の街で、
他の子達 ....
{引用=
風に想う
均等な枝は垂直に ―▲
はてなく
天蓋にむけられ
無数の曲直はいまだに葉をもつ さかさまに立つロンバーディア
やせた巨人がゆれ、かしぎ 街のどの家よりも高い身 ....
{引用=
約束したのに
やっぱりあなたが
来ない日は、
ばかな女でいることが、
ひどくつらいから… 》》》》》
さびしい秋色の街に
つよがって つくりわらいを
....
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