僕は鍋に言葉を入れる
そしてゆっくりと煮込む

調味料を上手に使って
少しスパイスを効かせて
とてもやさしく煮込む

いい匂いにつられて
妻が起きてくる
できたての朝の言葉を
二人 ....
自転車のタイヤがパンクしたので
中からチューブを取り出したら
古い友人が出てきた
すっかり雰囲気が違って
歳をとったのか
顔にはたくさんのしわがあった
飴をくれる癖があったので
すぐ ....
あの夜の夕食を思い出せないまま
今日まで生きてきた
妻が初めてつくってくれた手料理は
少し難しい名前だった気がする
思い出してるうちに
思い出すことさえ忘れてしまって
思い出せないまま
 ....
西から染まったお日様が
遺跡に沈む
冬の匂いをさせて
泥棒は何も盗まずに訪れる
花を添えて
ママが遺跡になったら
何も盗むものがなくなった
掌を合わせて呟く
これでいいのだ
その言 ....
雪が空中で止まってる
降り積もることを禁じられたように
あなたの肩にまだ届かない
優しさがある

僕は海へ行く
無限に押し寄せる
恐ろしいまでの愛を救いに
真夜中
帰宅して灯りを点けると
妻の気配が待ってる
まだあたたかいから
一緒に夕食を食べて
少しだけ話す


妻が僕を見送る
隣には
昨夜の妻もいる
その先で
いつかの ....
カメラマニアの父は
ファインダーを通してでしか
娘を見たことがなかった

娘の結婚式の日
撮影は業者に任せたので
父ははじめて娘を
ファインダーを通さずに見た
僕が欲しかったのはこ ....
冷凍庫に
たくさんの思い出が保存されている
消費期限が古いものから解凍して
毎晩妻と二人で食べる

これは去年の夏の海ね
妻がうれしそうに話す
去年の梅雨の日のドライブ
まだ残って ....
何か大切なことを知らないまま
僕らは生まれた
何か大切なことを見つけるため
僕らは生まれてきた

僕らはまるで
食べても食べても太らない
アフリカの子供
満たされない気持ちは
 ....
妻が増殖しているのを
街で見かけた
その数はおそらく
億単位だった

そしらぬ顔で
妻が帰ってきた
一人だった
いつも通り
二人で夕食を食べた
お母さんが本当は
恋愛結婚だっ ....
空の上で
少女たちが
花をちぎっています
あなたが窓辺で
ぼんやりと
見つめている雪が
それです

春になれば
空の上で
花は咲きません

すき、きらい、すき、が、
言えなく ....
愛情のかけらが並んでいる
誰よりもやさしい間隔で
誰も傷つけないように

ひとつずつ均等に拾いあげ
過ぎた日々を埋めていく

足りないかけらがあるので
人はレジに並ぶ
誰かを均等に傷 ....
還ってきた
眠りの海から
少女たちが
空の窓をひらく
光がくる
鳩がくる
少女たちの鳩だ
待っていた
この朝を
この命を
おそろしいほどに
光を浴びて
はかないほどに
人に ....
午前の木漏れ日に
瞳をうつし
手を差しのべると
遠い煌めきの中
太陽を追いかける
私がいる

木は語らない
何故ここにいるのか
何故いつの日か
いなくなるのかを

私は風と話 ....
あたりまえのこと

少しヒステリックに
語ってしまった夜も
いつかあの汚れた壁の
やさしさみたいに
やがて言葉なく物語る

子供が放る
軟球が壁に当たっては
帰ってくるものを
 ....
その窓の向こうには
どんな景色が見えていますか
その窓の向こうでは
誰があなたを待っていますか

透明な意識の反対側で
あなたを白くくもらせる
一枚の窓に描かれた
空想のミルクを飲ん ....
海を見ると
懐かしさがこみあげてくるのは
きっと私たちが受け継いできた命が
すべてを知っているからなのだ

私たちの親が見た海
そのまた親が見た海
さらにおよそたどり着くまで
私たち ....
ストーブのぬくもりを
あなたのやさしさと勘違いして
思わず抱きしめた夜

あたしの胸は
焼けただれて溶けて
あなたの一部分になることを
喜びとした

時には灯油がきれた
冷た ....
水道から
気配が流れている

ドドドドド、
どどどどど、
ドノドノドノ、
どのふねの、

私は乗る
その笛に
湯舟、に注がれる
湯布院
ああ、何故
ユフイン、

ナノ ....
ライオンが
オーバーラップする朝
死の気配はまだない
歩いて行けば
夜にはサバンナで死ねる
それがいやなら海だ

海までなら
歩いて行けば
昨日の夜まで行ける
そこから沖 ....
さみしさのようにあり続け
やさしさのように消えてしまう
鳥はいつも
そんな隙間に巣をつくる

おだやかな空のもと
揺れる木陰の向こうには
静止したままの朝
さえずりはまだ
誰に気づか ....
やさしくされるたびに
真冬の鯉になってみせた
一番深い底のあたりで
ひげだけ動かして
じらしてみたりした

春になり
浅いところに出ると
やさしい人は
もういなかった
かわりにたく ....
しずかな曲線を描いて
落ちていく
最後の一日が
地平線のあたりで

手を握り合う
もう二度と
離れてしまわないように

やがて朝がくる
信じるよりもあきらかに
疑うよりもたやす ....
受話器を逆さまにして
あの世と交信する

話すように聞き
聞くように話す
すると私は
あの世の人になる

受話器を置く
置き去りにされた
声とか相槌とか
もう思い出せない
 ....
いつか
目の前の少女が
いなくなる
そんな未来のことを
考えていた

少女は僕に
やさしく微笑んで
お似合いの白い帽子を
空高く飛ばした

落ちていく帽子を
目で追いながら
 ....
水族館のデンキウナギが
発電しているのは
何のため

自分を感電死させて
遠いところで待つ
恋人に会うため

遠いところで待つ
恋人が発電しているのは
何のため

旦那さん ....
路上の水溜まりに
人が落ちていく
見上げると
空を魚が泳いでいる
見えていなかった
世界の本質が
突然そのように
あらわれることもあった
今私は魚の餌になっている
愛する人が何も ....
イルミネーションの
絆はでんりゅうだった

絆はいともたやすく
つながったり
はなれたりした
しかしそれはまだ
本当の絆ではなかった

イルミネーションの最終日
でんりゅうが止めら ....
カーディガンの
襟のあたりに雨が降っている
まだ痛んでいない
グレープフルーツを選んで
買い物かごに入れる
銀行強盗は涙をながしていた
妻の匂いがするそのあたりを
抱きしめたいと思えば ....
雲は
空のことが好きなのだ

ある晴れた日
どこからともなく
雲はやってきて
やがて空のすべてを覆いつくし
ひとりじめにした
そして泣いた

泣いて泣いて
涙がかれたら
雲はあ ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
朝食自由詩008/1/18 22:52
命日自由詩408/1/18 2:02
手料理自由詩708/1/17 22:49
遺跡泥棒、冬自由詩1*08/1/16 22:32
自由詩2*08/1/16 0:47
気配自由詩408/1/15 1:09
カメラマニア自由詩408/1/14 1:31
記憶自由詩608/1/13 16:52
アフリカの子供自由詩3*08/1/13 15:45
確率自由詩4*08/1/12 0:02
かたおもい自由詩508/1/11 22:11
並ぶ自由詩108/1/11 3:35
鳩時計中毒自由詩2*08/1/10 1:31
木陰自由詩208/1/10 1:04
あたりまえのこと自由詩108/1/8 4:19
自由詩108/1/8 2:47
海の記憶自由詩408/1/6 17:59
やけど自由詩208/1/6 14:03
気配 No.9自由詩3*08/1/6 2:34
ライオンは寝ている自由詩508/1/3 1:52
鳥の隙間自由詩808/1/2 23:24
真冬の鯉自由詩508/1/2 16:05
大晦日自由詩607/12/31 19:15
受話器自由詩107/12/31 1:52
白い帽子自由詩307/12/31 1:18
デンキウナギ自由詩307/12/29 19:42
水溜まり自由詩307/12/29 13:36
でんりゅう自由詩307/12/28 1:36
汚れた襟自由詩307/12/26 23:40
雲が泣く自由詩1107/12/26 0:39

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