耳をふさぐと
潮騒が聞こえる

その向こうから
誰かの悲しい
声が聞こえる

耳をふさいでいた
掌をあわせて
真実に触れてみる

変わらないことと
変わることは ....
新しいものが
古いものを
見おろしてる

とても高いビルだ
天井のすぐ裏に
空がある

人の高さでうがいする
海の底で死に絶える
名前を持たない
魚のように

今朝はまた
 ....
コンビニの
いらっしゃいませに
笑顔でこたえたかった

でも、どうこたえればいいのか
わからなかった

店の裏口から
普段着の君があらわれた
夜の街をわざと遠回りして
二人で ....
悪いことをしそうな夜は
思い出として残ってる

悪いことをした夜は
事実として残ってる

ただそれだけの違いなのに
昨日も、今日も、明日にも
かならず夜はやってくる

あな ....
時間の音がする

何かと思ったら
雨漏りだった

いつのまに
雨が降ったんだろう

いつから僕は
泣いてたんだろう

雨の旧道を走り去る
一台の車の
静けさのように
故郷の中学校に
古墳があった

体育館に
おばけが出ると噂があった

体育館の中央に
バスケットボールが置かれた
バスケットボールは動かなかった

先輩たちが
見に来るんじゃな ....
時間の音がする

何かと思ったら
雨漏りだった

いつのまに
雨が降ったんだろう

いつから人は
泣くことを覚えたんだろう

雨の旧道を走り去る
一台の車の
静けさのように
ニホンオオカミが
絶滅したのだと言う

友達がいないかわりに
家族を愛したのだと言う

満月の夜は
月に向かって吠えたのだと言う

満月だけが
友達だったのだと言う

ウ ....
あなたの
エアコンを修理する電器屋さんは
あなたの恋人になるでしょう

ほんとうは
電器屋さんでもないのにその人は
あなたのエアコンを修理するでしょう

あなたのエアコンを
修理でき ....
スーパーマーケットの
牛肉コーナーに牛がいる
豚肉コーナーには豚がいて
鶏肉コーナーから鳩が逃げた

野菜コーナーを
案山子が何も言わずに
見つめている

店長と人妻店員が不倫した
 ....
おとうしゃん、おとうしゃん
三歳の息子が僕を呼ぶ

お父さん。

一瞬
低い声で
青年の眼差しを見た

もう彼の大人は
目覚めはじめてるのかもしれない

おとうしゃん、お ....
幸福な家庭が
幸福なふりをしたので
彼は家出した

そうすることで
ふたたび
家庭に幸福が訪れた

彼にも家庭があった
誰ひとり幸福と思わないのに
とても幸福な家庭だった
公園の桜
宇宙と相談する
僕は居眠り

夢を見てる
花が咲いてる
蝶々もいる

君は命を身篭る
もうすぐ春
宇宙の忘れ物
猫が
大丈夫ですと
鳴いている
本当は
大丈夫じゃないから
泣くのに

犬が
わからないと
吠えている
本当は
わからないことは
何もないのに

みんないつか
子供 ....
冬服の人と
素っ裸の人が
街を歩いている

どっちが正しいかなんて
誰もわからないから
みんな春服を着ている

素っ裸の人が
転んで背中を擦りむいた
そんなことぐらい
誰で ....
詩を消費すると
詩ではなく死になるから
読んでしまった詩が気がかりだ

よく晴れた休日
スーパーマーケットに
たくさんの消費者がやってくる

裏口の方で
上司に叱られていたあの店 ....
春が黙っている
鳥の声だけが響いている
遠くで何かを売る車の音が聞こえる

ひさしぶりに二階の部屋に行った
冬が黙って死んでいる
そのあたりにも春が訪れている
夢を見ていた
帰り道を失って
父さんと母さんを探していた

目を覚ますと僕は泣いていた
夢はかなっていた

父さんと母さんの知らない街で
僕は暮らしていた
春の土が
炊きたてのご飯のように
顔を出す

そんなご飯
誰も食べないわ
君が言う

君が炊いたご飯なら
僕ひとり
よろこんで食べたのに

おかわりしたら
夏になった
ポケットから詩が零れる
あなた行きのバスに乗り遅れてしかたなく
わたし行きのバスの中だった

乗客のほとんどは
自分に帰るため
僕は少し場違いな葛藤をしてる

発車します
 ....
古本屋に僕が売られていく
僕は父さんの続編だった
父さんは名作で
何度も増刷されたけれど
今では内容が古くなってしまった
何刷目かの父さんと同じ
古本屋の書棚に僕は収められる
初版の時よ ....
虹には色がないことを
魚は知っていた
魚眼に映る半円の
越えてはならない橋を越え
爆撃機がやって来た
虹には色がないことを
知ることもなく人は
魚と一緒に死んでいった
人の形だけが ....
おばえたての
春の言葉で
風が僕に話しかける

まだ少し
電話越しの声で

からだの輪郭が
白くフェードアウトしている
僕の訃報が届いた
過去の僕から僕宛に
確かに僕は死んでいた

魂を添付して返信すると
僕は静かに目を覚ます
とても狭いところ
近くでお経の声が聞こえる
ある休日
ちょっとしたことがきっかけで
僕らはモデルハウスを見学した
床暖房完備なので
ストーブは不要と説明された
あたたかたったのは
春のせいだと勘違いしていた
外はまだ少し寒かったの ....
自分の名前が
しっくり来なくて
他人事のように生きてきた

しっくり来てる
他人の僕は
どこか別な世界で
名前のように
生きてることだろう

いろんな春があった
それなのに
 ....
現代の死よりも
近代の死に存在感があったのは
そこに大きな背景があったからだ

記号のように識別され
消費されるように過ぎていく
現代の死にも
大きな背景があるとしても
誰 ....
見て
母さんがいるよ

君は
よろこんで
ハンカチをさがす

涙を拭くと
母さんは
消えてしまう

見て
母さんがいるよ

母さんは
いつも
涙の向こうにいる
瞳の岸辺に
釣り人がやってくる
かなしみの主を釣るために

まつ毛が雨に濡れている
湖水が溢れて川になる
大地の鼓動が震えている

釣り人は帰っていく
明日もまた来るだろう
かなし ....
バナナが自ら皮を脱いで
バナナはバナナであろうとする

それを口がおいしそうに食べて
口は口であろうとする

その様子をじっと見ながら
目は目であろうとした

庭に出ると
鼻が ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
潮騒自由詩3*08/3/31 0:41
水面自由詩508/3/29 23:10
言いそびれた言葉自由詩2*08/3/29 0:02
左手に右手を添える癖自由詩3*08/3/27 22:12
時間の音[草稿]自由詩2*08/3/27 1:07
古事記自由詩1*08/3/26 23:10
時間の音自由詩4*08/3/26 3:50
ニホンオオカミ自由詩308/3/25 3:06
エアコン自由詩108/3/22 21:48
カニバリズム自由詩3*08/3/21 22:25
おとうしゃん自由詩5*08/3/21 15:53
家庭の幸福自由詩008/3/20 23:31
宇宙の忘れ物自由詩108/3/20 9:29
大人びた動物自由詩308/3/18 21:08
忘れ去られた理由自由詩0*08/3/17 0:02
消費自由詩308/3/16 16:38
二階の部屋自由詩408/3/16 15:04
自由詩308/3/15 4:20
おかわり自由詩408/3/14 3:04
物狂おしい自由詩2*08/3/13 1:42
古本屋自由詩408/3/12 2:48
空襲自由詩108/3/11 23:55
フェードアウト自由詩108/3/11 0:52
Re:自由詩2*08/3/10 21:07
モデルハウス自由詩208/3/9 21:03
春の名前自由詩408/3/9 3:38
僕らの背景自由詩208/3/8 22:51
母さんがいるよ自由詩208/3/8 1:14
釣り人自由詩408/3/7 22:21
春のバナナ自由詩108/3/6 23:48

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