もうじぶんから発するほど電磁波を浴びていた
年度末の翌月はいつもこんなだ
正社員のひとたちはみんな帰ってしまった
あたしはあたしをぼくと呼びたくなった
ぼくのことをぼくたちと呼びたくなった
....
鳥がみどりに
ひっかかっている
そこからはばたくそれは
とつぜん現れた影のようだった
今夜もまたワインよ
いちにちの疲れ
ぼくに差し出せよ
ぼくの疲れは癒され ....
喫煙ルームから猛スピードですぎてゆく町並みを見つめていたら町がミニチュアのようになっていた
いきものたちのいないのどかな光景だ
シートに戻って車窓から町を見つめてみても町はミニチュアのよう ....
雫の滴るココロノヒカリ
波紋の静けさココロノヒカリ
ココロノヒカリココロノヒカリ
月の明かりにココロノヒカリ
戦車の音鳴るココロノヒカリ
ココロノヒカリ
....
ヨシミはカワバタとユキオのどちらが好きなのかを考えたことがない
ユキオとサヤマのときは考えてもいたような気もする
カワバタに借りたプルートウというマンガを読みながらその考えたこともないことをはじめ ....
ぼくのせいで旦那さんが死んだことを
ぼくもそのとき死んだことを
奥さんが33ヶ月投獄されたことを
こどもの成長のためだけに奥さんが死ななかったことを
あなたたちのこころのひかりが
ほんとうに ....
それにぼくはふたをしたのか
みてみぬふりをしたのか
きもちをコントロールしたのか
あきらめたのかわからなかった
でもいまゆめのなかで
あなたのもうひとつのなをよんで
はずかしくて
ホ ....
日本でホームレスであるということ
マズローの欲求でいう生理的欲求を満たし
安全欲求をかろうじて満たしているひと
かろうじてとは
安全欲求を完全に満たしてしまえば承認欲求のステージにいってしまう ....
嵐のまんなかで
ページがくられるように
きみは離れていった
永遠なんて言葉で
さよならしたふりをするのなら
ふってくれたらいいのにね
もう二度と会えないひとなんて
ほんとうにいるのだ ....
絨毯に虹ができていた
ガラスのテーブルのせいだろう
この世はひかりで出来ている
否、この世はひかりで見えている
否、この世はひかりのようなもので出来ている
テーブルはガラスで出来ている
虹 ....
日がしろく輝いて
ひとびとに熱を伝えている
傍らの空にはさくら
それをこどもみたいに自慢げによろこび
それをおとなみたいに適度な距離でたのしみ
日がバス通りの向こうに落ちて
ひとびとから熱 ....
仕事を一生懸命するひとが人格者とは限らない
重要なことは考えないで決めている
酒は一日の疲れを酒の疲れにすり替えてくれる
家で飲む酒は川の水のように重い
永遠の緑は情熱の持続を教えてくれている ....
ぼくは病院を経営していた叔父叔母に育てられました
ぼくの部屋は病室でした
かたくて高いベッドと狭い机しかなかったけれどなんの不自由もありませんでした
妹の部屋は病院の最上階、叔父叔母の居住するフ ....
ここが気持ちの良い伸びやかな場所だということが
霊能のないぼくにもよくわかる
水のふくよかさが光に自由だ
土や風はじっとりとあえなく色彩へとかわり
そして私は鼻腔から生まれかわる
この地で生を受け ....
あの小山のてっぺんの公園に
十七のぼくは二十六の女と上った
ふとくてぐねったまっ白いアスファルトの道
したで買ったハンバーガーは
チーズの足腰のない冷えた匂いと
ピクルスと湿っぽいパンの淋し ....
情事のあと
ホテルを出て町をぶらつきたかった
春の夜風がよくなぶってくれている
高知の町にいても
坂本龍馬に思いは馳せない
川面にはさざ波がたっている
それはそう見えるだけで
た ....
青い雨と蛍光灯の光が見える
朝めざめてまだ空いている車中で
ぼくのまだ冷たい鼻を中心に
きょうも世界を考えはじめている
命を使いきることを課していたら
不倫なことはしたくなくなる
どう ....
女が死んだと聞いたのはいまから五日後のことだ
川沿いの夜に白がしなだれかかる頃それを聞いた
死世界のぼんぼりを幻視して生の回廊を歩いていたのは
私である筈なのに三年前別れた女がさきに ....
葬式いろの装飾の
さくらのぼんぼり
きみがなまめいた
生理にせがまれて
おれペニス口紅の
スティックになる
つまらない命いろ
葬式いろの装飾の
さくらの ....
花冷えの雨はやむことがなかった
低い山にガスを這わせて
四分咲きの桜花を辱めて
花冷えの音がやむことはなかった
電車が運んでくれるそのさきに
灰の街が自意識に苛まれて ....
その日雪がふっていた
徹夜になろうかという夜だった
案外おおきくてストップモーションの
その日雪がふっていた
けぶる街で祝杯をあげていた
それは誰だ
その日雲がなくなっていた
そ ....
カタヤマを丸亀でピックアップした
競艇にいってくれないか、ユキオはびっくりして聞き返した
このまえ上田さん、パチンコが好きだって話してただろ、
週いちどのカタヤマとの飲み会でそんな話になったのを ....
コガネイ係長と食事をしたあと係長いきつけのスナックに連れていかれた
ふだんスナックなど行かないユキオには居心地のいい場所ではなかった
こういう店はカウンターのなかにライトがいくようにしてある
大 ....
シバタさんと久しぶりに話せた
所長にだいぶ持っていかれてるんじゃないか、
ユキオは顔をこわばらせながら
そうですね、と言って演技ではなくため息を吐いた
シバタさんからの注文以外ほかで取られてい ....
コンビニの袋をちりちりいわせながら歩いていた
夜風のなかに小便のような匂いがした
あたりを見回すとその匂いはツツジの群生からこぼれていた
それは甘くて涼しいヨシミの匂いにも似ていた
連休ユ ....
そのメーカーはあった
コガネイ係長の言うとおりだった
最初にかけてみたメーカーがそうだった
そこのなら、移設でもシステムやりかえでも、何でも出来ますよ、元そこの社員の設計がうちにはいますから ....
きみんとこ、自動倉庫できるんだ、
ようやく工事物件の話をひとつ掴んだ
いまある自動倉庫を移設したいんだけど、きみやってみる、と現場のコガネイ係長が声をかけてくれたのだった
カタヤマの言い ....
きょう今からそっちに行こうと思うんだ、
社長から所長の件でお客様をまわるから一応お客様の昼からの予定を確認しておいてくれとのことだった
シバタさんにはあえてしなかった
シバタさんはことさらユ ....
所長とお客様のところですれ違うことが多くなってきた
常務のイケダは、それは社長と片山先生のまいた種だから上田くんは悪くないよ、と言ってくれた
さいきんやっぱりシバタさんが印鑑ついた発注書がない ....
ユキオは高速を高松ではなくてヨシミに向かって飛ばした
酒造メーカーの博物館で事務をしているヨシミに3時くらいに着くから早退しろと言ってみた
わかったよ、と即答で応えてくれたことにユキオは感謝した
....
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