普通の日々がすぎてゆくはずだった
なのにこの河の氾濫はなんなのだろう
明日に架ける橋なんてなかった
あるとすれば
荒れ果てた灰色の
置き去りにされたような橋ぐらいのものだ ....
これだけ地に足つかずにさびしいのなら
どれだけ傷つけあったって
会っているほうが
ましなんじゃないのかとさえ思えてしまう
神々の意思ではないのか
オリオン座だ
....
ぼくらは月下の一群だ
ここのつも年上のぼくだけれど
ぼくらは一群としか言いようがなかった
お互いかんがえていることぐらい
くるしいほどわかっていた
お互いのくるしみがわか ....
思えばめぐまれすぎていた
ないものなんてなかった
わざとないふりしてるくらいだった
だからおまえのしたいことなんか
切実にかんがえることがなかったんだ
うしなうくらいなら ....
あたしたちには今と過去しかないね
だから20XX年、あたしたちのとなりに
あたしたちがいるのかどうかの話をして
おんなはいつもさいごにそう言った
おれはそのときわかったんだ
....
いちばん好きなひとと
けっこんしたいとおんなは言う
だからそれを
かんがえるようにとおんなは言う
ぼくは頭がい骨のまわりでかんがえる
後悔とざいあくの海のなかにいる
....
けっこんできなければ
わかれなければならない
それはだれから
おしえてもらうことなのだろう
彼女から?
彼女の友人から?
おれの妻から?
おれのこどもからか? ....
宇宙はぼくらを試すことがない
あらゆる事象は試練などではない
この愛をつづかせようとすることに
なにかひとつ肯定的なものさえあれば
たとえばそう
風わたる空に揺れる
....
ふたりで眠り込んだベッドの窓辺には
二週間まえ満月と金星がいてくれた
急斜面に生えた常緑樹たちの縁どりが
この五年かんおまえに微笑んでくれていたんだね
みどりになりたいよ
....
おまえは強くなりたいって言った
強くなったって言った
それにぼくは反発した
宗教のボスなんて
信じていないぼくなんかにしてみれば
なんの実績もない経営コンサルタントに ....
朝の公園でおんなは貝殻のようだった
見つけたことを喜ぶみたいな
ぼくはひとりのガキンチョになっていた
おんなから二度キスをされた
髪の毛にしてくれたあと
ぼくから唇にした ....
悲しい歌ばかり歌っていた
ひかりもなかった
影もなかった
本質ってなんだろう
悲しい歌ばかり歌っていた
人間に進化した猿とそうではなかった猿
その違いは森からでたか ....
幸せというものがあるのなら
ぼくにしかおまえ
幸せにできないこと分かっている
なのにぼくのせいで
おまえはこんなにさびしいんだ
おかしいよな
社会制度でちぎらな ....
カノジョはお姉さんのこどもと夜の公園にいた
お姉さんからあずかっているのだそうだ
それを電話で聞いていた
あの木にさわっておいで、
いまコウチャンがうれしそうに走っていったよ
ど ....
駅をすこし上ったところに
ウィスキーをやれる店がある
バーボンにしようか
スコッチにしようか
いつもすこしだけ悩む
ロックと炭酸水のボトル
それにナッツが運ばれてくる
あなたにこんど会っ ....
精神の荒野に待つだけ
おまえはオレとはちがう
ダーティーだ
どんな手を使ってでも
おまえを荒野に連れ戻す
ただの光や影なんだ
光もないし影もない
ずっとお ....
あんなに月といっしょだったのに
金星はひとりぼっちになっていた
でもそれは
俺の見えている世界だけのお話で
じっさいはなにも変わらないよな
流れ星だ!しばらく見つめていた ....
つよくなってどうするの?
つよくなったあとどうするの?
花を咲かせてどうするの?
花が咲いたあとどうするの?
過去は変えられないけれど
じぶんと未来は変えられる
....
きのう月ははんぶんで
それはそれで気持ち良さそうに
浮かんでいる気もしたけれど
ぼくらの星の衛星は
勝手にひかりに名前をつけられている
まるでひかりが月みたいじゃないか
....
尾崎豊がコンサートで
オレはクールだ、オレはタフだ、って言っていたけれど
オレもそんな人生を歩いている
42にもなって
いまだにじぶんの可能性に
疑いをもてないでいる
....
妻ともおまえとも別れられないオレだった
寝てないから仕事はキレを増した
足首からしただけがふわふわしていた
おまえのことばかり考えていた
女は幸せとは好きなひとといっしょになることだと言った
....
あたしが頭が痛いのは残念ながらあなたといま別れの電話をしているからではなくて二百枚ぶんの入力とずっとあたしの頭のうしろに扇風機の風が当たっていたこととあたしの仕事ぶりというかあたしをずっと金井さんが冷 ....
彼女は信仰をしている
流されないでつよく生きてゆくためにやっているのだそうだ
彼女の読経をよこできいていた
ある花の名前を何百かいも繰り返していた
花の教えなんだ、そんなメルヘンなことを考えて ....
夏の終わりの空たかくに死者の小骨のようなヒコーキが白くいとしく飛んでいる
ホテルのプールに浮かんでそれを見てたらあたりまえのことに気づいたんだ
耳は水につかってて水の流れの音がした
なん ....
彼女の結婚相手は気を病んでいた
彼女はアンデルセンもそうだったのだと言って
信仰している宗教の話しをはじめた
ぼくにはどれもが遠い気がしていた
あんまり一生懸命お祈りするもんだから
仏壇にむ ....
いってらっしゃい、には
いってきます、だろう
でも
おまえからのそれには
いっております、になってしまう
ただいま、は
たんなる帰宅のことばではない
ふたりを日常にからめとってゆく
魔 ....
彼女の結婚ばなしを口に手をあてたまま聞いていた
彼女の逡巡や覚悟を聞いていた
その訓練は五年間積んできたはずだ
身動きもとれずに聞いていた
あなたが傷つかない相手なんて、あのひとしかいないよ、 ....
おまえの不在と
おまえのそばにおれの不在
見える世界に傷つけられて
見えない世界で痛みと自失
だから幸福なんてないんだと
だから永遠なんてないんだと
うそぶかな ....
いちょう並木のカフェに自転車で現れた
荷物をおく椅子えらんでいた
どこに座りたい?
ここに決まってるじゃない、
同棲とはまいにち会うということだ
秘密をじゆうに探すということだ
頭 ....
成城石井で食材をどか買いして
カラオケにいって
てきとうにBGMをかけながら
鴨のローストやよつ葉のヨーグルトや無花果のお菓子を食べて
ぼくは尾崎豊を歌い
あなたはカントリーロードやトムソー ....
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