カミナリは奇跡だ
カミナリの数だけ奇跡があるんだ
さっきまでの天気がうそみたいになる
カミナリは奇跡だ
カミナリの数だけ奇跡があるんだ
宇宙の年齢から考えると
三日徹夜しようと
二日も続けられなくても
五十年没頭しようと
なにもしなくても時間をかけても
おなじことなのだ
おなじ一瞬のことなのだ
....
土曜日
新神戸駅に着いたぼくを
おおきな花火大会が迎えてくれた
戦争の音が
山と港にこだましている
降り立ったホームに足をとめるのは
ぼくぐらいだった
ビルの ....
世界はざわざわとしていて悲しかった
おうちに帰ると
部屋には悲しみがたんたんと続いていた
悲しいということが
生きているということだった
悲しいということが
生きているということだった
....
いまはもう濃密ではない
あなたの気配
いまはもうぼくには淡い
あなたの気配
記憶はもうただの濃淡だ
存在とはたんに
気配が濃密なだけなのだ
ぼくらの時間軸で
それは固着して見えるだけ ....
東野から山科への地下鉄は銭湯の匂いがした
紫色のシートに座り狭い車内を見渡していた
自由だ
自由だ
運がいい
夢から醒めたらそうするように
これからの気掛かりを探すのだった
自由だ
自 ....
百合のつぼみが白く垂れている
セミが電気設備のような音をたてている
葉が揺れている
オレンジと黒の蝶が羽根をやすめている
影が揺れている
緑がひかりで黄ばんでいる
....
赤子のように
愛したひとがいた
しあわせだった
はじめて知ったひとの乳首を
赤子のようにさがした
姿が見えなくなったり
声が聞こえなくなったりすれば
泣き ....
あなたもそうだろう
死んだらまっさきにあなたの過去にゆき
ぼくはあなたに寄り添うから
ぼくはあなたに寄り添うから
幼稚園のときいじめられっ子だった
でもいじめっ子たち ....
町を歩く
暑くて疲れたら
喫茶に入る
寂しくて暴れそうなら
ビルを見る
線路を見る
セシウムさんかあ
ストロンチウムさんかあ
この光のなかにもいるのだろう
陽は沈んだ
永遠とはなんであろうか
繰り返すことが
永遠ではないことは分かっている
それでは永遠とはなんであろうか
ひとつとしておなじものなどない
だけど
おなじふりをして繰り返してい ....
ぼくのぜんぶをさらけだせたひと
ぼくがいちばんやすらかになれたひと
いっしょにおさんぽできなくなったって
仲良しでいるから
いっしょにおさんぽできなくなったって
ぼくがいちばんやすらかになれ ....
世界が同時に株安に見舞われている
株が高すぎたからそうなったのだろう
身の丈に引き戻す働きかけか
電気が足りなくなっているのも
身の丈に引き戻す働きかけか
それでは身の丈 ....
挽き肉になって朝日にきらきら光るのは
猫の死骸か
それとも恋?
秋の日の朝風をきりながら自転車がゆく
それを見て
ときめいた!
挽き肉になって朝日にきらきら光るのは ....
六十六年まえの今日
セミが朝からの暑気を鳴いていた
あのひかりや
爆風や
炎熱の地獄のなかに
どうしておれはいないのだ
六十六年まえの今日
いまのおれのよ ....
いつも悪魔は優しげに
地下鉄の階段を上がってくる
いつも天使は無関心に
背中だけ見せて寝転んでいる
青い泥のような夕暮れだった
命の汚濁のからくりを
じっと息を殺して見つめていた
い ....
声を荒げて
あなたに言葉を暴れさせた
声ががらがらになり
風邪をひいたようになった
それを想うとあなたには
無言の暴言を吐かれていたことに気づく
いちばんの意地悪は無視・無関心なのだ
お ....
大阪は通り雨が激しかったけれど
折りたたみ傘を持っていた
それを微笑みながら商談していた
あなたにあんな暴言を吐いたのに
あなたからの着信を見つけると
我慢しきれない ....
貴女からの愛を汚したのは
俺だ
心が大切だ、
なんて大人のふりして言っておいて
心もあれもこれやも
探せなくて狂ってゆくのは
俺だ
助けて欲しかった
気づいて欲しかった
四ツ谷駅で
....
またやってしまった
自殺するしかないようなことなんて
そう滅多にあるものでもなかろうに
またやってしまった
心をください
生きていることが
夢見ていたことと
....
AMラジオから
夏の闇が聴こえる
海底の暗さで
肉の声をこぼしている
戦争終結の蝉しぐれに
あやしい火が灯る
幸福を蔑ろにする愉楽か
AMラジオから
夏の闇が聴こえる
俺よ、この世の汚濁よ
ビルを探せ
階段を見つけろ
屋上にたどり着け
そこから身を投げろ
コンクリートに散れ
俺よ、この宇宙から消滅しろ
夜遅く女の部屋にゆくと
女の使っているお椀やお皿に
夕ごはんを盛ってくれていた
二十も年下であるのに
玄米ごはんと海老の水餃子をつくってくれていた
まえから誘われていたのを
ぼくは連絡をと ....
荒野にときどき吹く風がある
代わりを求めても仕方がないのに
荒野にありもしない花を探している
荒野にときどき吹く風がある
お花屋さんの冷蔵庫の匂いがする
さわやかな湿った ....
空がたかい
空がふかい
空がたかい
空がふかい
ぽつんと宇宙基地に立つ
空がたかい
空がふかい
ぽつんと一人立っていた
空がたかい
空がふかい
空がたかい
空がふかい
八年まえのおとといに行くと
そこはパラレルワールドで
八年まえのおとといそのものではなかった
すこしちがうおまえが車を降りて
ぼくのマンションに入っていった
ごくあたりま ....
なんでおまえが
あんなおまえになれたんか
おれわかってん
おまえのこと
おれが愛してるからやろ
おれの愛につつまれてるからやろ
だからあんなおまえになれたんや
....
夏のひかりがきらきらしている
微風にみどりが揺れている
存在には影が寄り添っている
音だけが聞こえない
空の水いろが黙っている
雲がこころのように浮かんでいる
外界まであとすこしの
白い ....
たいせつなひとが死んだ
死ぬのは
だれだってあたりきなのに
こんなに悲しみで
ざわついているのはなぜ
死がふしぎなわけでもないのに
別れることは
だれだってあ ....
夜は来るんだ茜色
紫ブルーの茜色
そんなに遠くはないけれど
幸福と傷にゆれている
そんな筋合いはないけれど
紫ブルーの茜色
夜は来るんだ茜色
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