手品師のことを
手品、と呼ぶようなもんだから
咲いたさくらを
さくら、と呼ぶのは好きではない
さくらがすごいのは
花を咲かせたそのあとだ
花を散らせ葉を輝かせ
その色をかえて落とし
....
久しぶりに久が原を歩いた
たまに空を見上げて
迷い迷いしながら本門寺にむかった
さくら木にはまだ花がなかった
裸木が空にあきらかを漲らせている
ありがとう
そうつぶやいてそこをあとにした
....
誰も乗らない僕は電車だ
赤茶けたさくら木をゆく
まだ誰も花見をしてない
昼下がりの散歩道をゆく
僕は多分楽しくて自由だ
大丈夫、僕は天才なんだから、
カラスが一羽飛んでいる
音させて ....
そのことばかり考えていた
雨に煙るよ
曇り日の
午前のひかり
ありふれた春の嵐
土曜日の東京
買い物に出掛ける
帰宅してから
ひとりで
生きてゆく ....
東京は20℃だそうだ
今日は蕾が赤茶けて
さくら木は
粗雑に汚れて見えるだろう
さくら木に
花が咲いたらさくらだと?
そんな勝手な考えを
許してなんてやるもん ....
そこにはいないひとびとの代表として
ぼくが送り込まれているのだ
そんなことよりもぶれないものがあるのだと
その翻訳を任されたぼくは二重スパイだ
そういうところには
ああ、これが金持ちかあ、 ....
久我山駅にこんな時間に着いて
こんなとこに
ビジネスホテルなどないだろうに
ぼくは坂道の商店街をあがって行った
そしてすぐおりた
踏み切りを渡り
旧神田川のほうの商 ....
ふるえる
不安な夜だった
救いについて考えていた
あなたの幸福になりたかった
理不尽にはなりたくなかった
ふるえる
不安な夜だった
救いについて考えて ....
いまのぼくが
あの頃を見つめていた
時間とは距離なんだと思う
その距離感が楽しかった
あの頃のぼくが向こうにいた
ぼくはぼくが愛しかった
あの頃がどの頃か分から ....
ぼくはレオナルド・ディカプリオに似ている
江口洋介が
南海キャンディーズの山里に似ているくらい
セシウムがカリウムに似ているくらい
スパゲティーが
讃岐うどんに似ているくらい
ストロンチウ ....
名前を呼ぶくらいじゃダメだ
名前を唱えるくらいじゃなきゃダメだ
そうすれば忘れない
記憶だけがふたりの
帰れる場所になるのだろうから
ぼくがまもっているから
ぼ ....
宇宙
このアシンメトリーの所産
みんな
相殺されなかったから生まれた
ぼくがいる
きみがいる
犬があるく
雲がかかる
みんな
相殺されなかったから生まれた
このアシンメトリーの所産 ....
金星と木星に
月が挟まれていた
月のサンドウィッチ
星が二種類のパン
二種類のパンで挟まれたサンドウィッチ
食べたくなった
同じパンに挟まれたサンドウィッチより
安心感のある食感ではな ....
励まさずにはおれなかった
ひとりじゃないよ
僕もだよ
あのときあの部屋の片隅で
それを伝えてあげたかった
幸せなんだよ
惨めじゃないよ
恥ずかしいことなん ....
あのころはたしか
周りとうまくやっていた
350円のランチ
淡々とみなで食べていた
午後からは
帰ることばかり
考えていた
あのころはたしか
周 ....
ま暗い部屋に時計の音がする
そのどれもが違う音だ
人生のあちこちから音がしている
間に合わないかも知れないけれど
ひとに尽くして生きてゆこう
もっと役に立てるはずだから
....
もう消灯の時間だ
ぼくは個室だけれど消灯は絶対だった
暇だから携帯で詩のサイトばかりのぞいていた
自由だった
あの頃もそうだったか
ぼくは中学生のとき病室に住んでいた
がらんとした冷たい部 ....
カーテン越しに白かった光が、いつのまにかに黄ばんでいる。
もういちど見やると、黄ばみはもう失せていて、こんどは青みがかった灰白色になっている。
そこにはオレンジやピンクが、影のように滲んでいる。
....
痛みに耐えて目を閉じている
今日で臥して四日目になる
病室にはひかりがしみている
トイレに行くのも辛いから
あまり食事もとらないでいる
ひかりのなかにいる
風が ....
はぐれてしまった宇宙飛行士は
地球を見つめながら死んでゆくのだろうか
ぼくは誰とはぐれてしまったのだろう
かなたに何を見つめながら死んでゆくのだろう
下唇をすこし噛んだら
....
坂道をあがると夕日が現れた
エスカレーターが欲しいなあ
それからまたすこし下り坂をゆく
もとはここは小山だったんだろう
鳥がきいきい啼いている
アスファルトの温度の匂い
....
先生、お昼からどこか出掛けるんですか
お芝居ですか
お芝居を観にゆくんですか
そとは風が吹いてますね
水っぽいひんやりさが、何かの始まりみたいですね
ぼくも、ちょうど ....
恋人の心変わりを感じていた頃、辞表を出してくる社員がいた。
彼らはぼくをひどく傷つけた。
ひとのこころなんて分からないものだ。
思い返してみればそんなそぶりもあった。
そぶりかあ・・・・
人 ....
今更なことを
ぼくらはやってゆこう
自我は時間だ
自我を減らせば
時間も変わる
今更なことを
ぼくらはやってゆこう
愛されなくてもいいじゃないか
愛 ....
ぼくは馬鹿だ
みんなかしこだ
夜8時に空を見る
北西にふたつ
星が列んでる
強い光と弱い光だ
ふたつは他人だ
でもひとつだ
たいせつな存在が
ぼくらの土台となって
働いてくれている
たいせつな存在の
ぼくも
土台となって働いていよう
それが空しくなるようなとき
そんなときこそ
....
商談フロアは明るかった
外光のような明るさはすべてLEDだった
設計課長が施工後の保証を求めて来た
外からはこの社屋の外壁工事の音がしていた
私たちはその仕事を商品の納入だけだ ....
外気が内気に
してくれていることをただ想え
外気と内気を融和する
それには受容が必要だ
受容とは感謝のことだ
外気が内気に
してくれていることをただ想え
....
春はふたたび
贋作者たちの水いろ
雨つぶたちの素直な旅路
生きにくさが心地好かった
朝のアスファルトが
黒くぬれていた
つめたい大気には
ヒッグス粒子がま ....
銀行から電話があった
母のお金がなくなっているのだという
私はフィリピンとブラジルの混血だ
母の国には行ったこともないし行く気もない
父はもういない
いないからだろうか
....
39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79
0.44sec.