茅ヶ崎駅近くのライブハウスにて
カウンターに並んで座った
詩友の欣(きん)ちゃんは、店員の女の子に話しかけた
「名前、なんてゆうの?」
「かれんです、名前負けしてるんですぅ」
....
葉は、枝があるから葉であり
枝は、幹があるから枝であり
幹は、根があるから幹であり
それらおのおのがつながりあい、初めて
歓びのうたを風に囁く
ひとりの木
枝葉の手のひら達を
....
若くして世を去った歌姫よ
あなたの面影が今も振り続ける
夢の旗
透きとおったその手と
肌色のこの手で
握りしめ
精一杯、振り続けよう
一つになった僕等の魂は輝きを増し ....
心の中のゴミを掃く
ざぁ、ざぁ、という
あの音を聴け
塵一つ無くなった心の中の
真空の庭に
ひかりの鳩が降りてくる
そうしてひかりの{ルビ嘴くちばし}は
開き
....
静かな川の{ルビ水面=みなも}は波紋を広げ
今日もざわめき歌っている
その上に架かる橋を
誰ひとりそ知らぬ顔で渡っている
帰り道のパン屋で
硝子越しに覗いては
ランプに照らされていた
こんがり丸い窯焼きパンを買い
紙袋に入れてもらう
今日は、給料日。
10回の高級料理と
たった1個の窯焼きパ ....
銀行ATMの画面に映る
貯金残高の、底が見えた時
日雇いの如き自分に
歯軋りをしながら
この手を額にあてて、考える
一日の労働を終えて
家に帰れば迎えてくれる
妻 ....
駅前の歩道を歩く
僕の目線の先で
吹いた突風に
電信柱に寄りかかっていた
自転車はがしゃん、と倒れた
半袖のYシャツのを着た
すずしい顔した中学生等は
「直すとボク ....
私は転がる団子です
長い間
日のひかりを食べ
雨を食べ
風に包まれながら
何故かのぼりの坂道を
ごろごろのぼってきたのです
ごろごろ転がっているうちに
だんだん大きくな ....
草野心平さんの蛙の詩を読み
古い本を閉じた後
夜の散歩へと、家の門を出た
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ ....
彼は素朴な場面へ
裸心のままに、飛び込んだ
長い手足の隅々に増殖する
(歓びの細胞)はゆきわたり
彼の裸眼の射抜いた、先に
一つの宇宙があらわれる
....
小さき花のテレジアは
修道院の姉妹等の
冷たい目線が心に刺さり
獄中で鎖に繋がれた
ジャンヌ・ダルクに自らを重ねる
「風の家」に住む井上神父は
老いた体に嘆きつつ
在り ....
休日。
ふとんの上にのびている、午後
窓の外から
かーん
威勢のいい、ゲートボールを
打つ乾いた音が、青空に響く
(何故、僕の目の前に
もやはもやもや ....
コロッケを箸で摘みあげたら
笊に敷いた紙に沁みる
人型の油があらわれた
いつも凝っと
あちら側からこちら側を
覗いている
世界のまなざし
手のひらを見てごらん
五つの指紋は
太古の時を越えて
君にしゃべっている
遠い異国の丘にある
旅先の宿で、軋む階段をのぼり
入った部屋の開かれた窓から、身を乗り出し
いちめんの街を見渡す
日々背負っていた
「悩み」という名の重たい荷物が
ここでは ....
いつになくぱっちり目覚め
むくりと起きた僕は
妻にお風呂セットの袋を渡され
車のキーを廻し、アクセルを踏む。
青信号の交差点で、すれ違う護送車。
(青年達の母親は、今頃どうして ....
デクノボウのまま突っ立っていた、あの日の青年。
谷底の闇でうずくまっていた、あの夜の青年。
人間を信じられなくなりそうな
分かれ道まで歩いてきた僕に
天におられる恩師の薄っすらとし ....
?の裏側に、いのちがある。
?の裏側に、人がある。
?の裏側に、家がある。
?の裏側に、国がある。
?の裏側に、青い地球の星がある。
宇宙の闇をめくった裏側に、?がある。 ....
鏡に映る自らの
こころの内に湧き出ずる
喜びの泉
胸にそっと手をあてる
「遠い異国の教会で、ステンドグラスの窓か
ら射すまっすぐな虹のひかりの中、人々は
棺に横たわる人に次々と花を置いていく。」
「ノートルダム寺院に腰を下す詩人草野心平
さんの胸底 ....
(神は無い)とつぶやくほどに
目の前にあらわれる不思議はなぜだろう・・・?
窓外の雲はよけて
机上の日向はふくらみ
天からそそぐまなざしが
衣服にしみて
僕の地肌をあた ....
この部屋の窓からは
雨の降り始めた{ルビ靄=もや}の向こうに
遥かな山々の緑があり
眼下に一面の畑は広がり
歩道には、レインコートを着た犬と
飼い主が歩調を揃えて、歩いていった
....
二つに割れた、器があった。
組み合わせたら、一つになった。
長い間、探し歩いてようやく出逢った
君と僕のように
なぜか知らぬが
私の目の前には
日々ひとつひとつの穴が、ある。
この両手に盛ったやわい土で
一日、ひとつの穴をふさいで
一歩ずつ、歩いてゆくならば
ふりかえった背後に、 ....
無限に広がる宇宙の中で
ぽつん、と浮かぶ青い{ルビ惑星=ほし}。
星の数ほど今も織り成されている
それぞれの一日、と
それぞれの場面、にて
人と人が目と目を
あわせ、そ ....
やがて発車のベルは鳴り
旅の列車がゆっくり走り出す時
一つの運命が地鳴りをあげて
見果てぬ明日へ、動き出す――
ある日、名指揮者は倒れ
コンサートは(指揮者無し)で行われた
ヴァイオリンもフルートもホルンも
それぞれの奏者は皆
無人の台の上にいる
まぼろしの指揮者のうごきを見て
それ ....
恩師のY先生は
僕が被災地の石巻へ旅に出る時
ポルトガル料理とポートワインに酔い
ほてった頬で突っ立つ僕を
店の出口まで見送り
その日の遠藤文学講座で
僕の詩集が何冊か売れたお ....
人形劇の舞台の上で
おどけた河童の傍らに
黒子がひっそり、ついていた
日々の舞台で僕がマイクを手に
愉快な話をする時、ふいに
僕を僕にしてくれる
黒子が背後ですぅと動く
....
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