昨日見た夢の中で
銀世界の夜
雪だるま達が
無言の笑い声を響かせ
雪合戦をしていた
目覚めたベッドから
窓を開けると
おととい冬の子供等が
煙の吐息昇らせて
きゃっきゃっ とつく ....
石の階段を{ルビ真=ま}っ{ルビ直=す}ぐ上ると
{ルビ古=いにしえ}の文人達が林に眠る東慶寺
境内の門の向こうには
紅白の梅園が広がり
石畳の正面奥に
惑いなき御顔で座る大仏
....
ニッポン Japooon ・・・・・・・・
日の丸の太陽を
青いペンキで塗り替えて
水の惑星に小さく浮く
びみょうなくねりの島国は
僕等乗せた 沈みかかりの小船
21世紀
曇った ....
今日は老人ホームの庭を
婆ちゃん達とさんぽして
草っ原のベンチにみんなで肩を並べ
空泳ぐ鯉のぼりを眺めていた
「大きいまごいのお父さん」は
しぼんでこんがらがった日干しの姿で
尾っ ....
ベッドの脇
ランプの{ルビ灯=あかり}を落とした机の上
時計のついていないベルトと
髪を{ルビ梳=と}かしたことのない{ルビ櫛=くし}が
寄り添って置かれている
聖なる夜に贈り物をしよう ....
若い頃
「やさしさ」は理想の全てで
自分や人の 心も 体も
真っ白なペンキで塗りたくろうとしていた
大人になるにつれ
白いペンキはふしぶしで{ルビ剥=は}がれ落ちた
テレビの箱 ....
この世がひとつの鍋ならば
阿呆らしきことのごった煮じゃ
杖を頼りに散歩から帰り
ブラウン管を開けば
空母から戦闘機が
美しい水平線へ消えてゆく
イラク人の出稼ぎ労働者がバスに揺られ ....
最終の江ノ電を降り
乗車券を{ルビ車掌=しゃしょう}に渡す無人駅
夜の海を横目に歩き
{ルビ潮騒=しおさい}を背に
なだらかな墓場の階段を上る
振り返ると
西の夜空に暮れる三日月
....
あらすじどおり進めない
「自分」を脱いで 窓から{ルビ棄=す}てて
惑いなき心の原石のみを
この部屋に残したい
汚れの落ちない
「自分」を脱いで
洗濯機に放り込みたい
{ルビ筒状 ....
見知らぬ都会の夜
人ごみをかき分け
「すみません、手相の勉強をしてる者ですが」
の声を会釈でよけ
{ルビ潜=もぐ}りこんだカフェでコーヒーを1杯
( 日中の{ルビ時間=とき}は遠き夢な ....
一番支えてほしい人が
勇気づけてほしい人が
悪気もなく「空気でできたとんがり石」を
僕の胸に投げつけた
「グサッ!」と刺さる鈍い音で
傷ついたのに君を妙に気遣って
ひきつった 笑顔の ....
小学生の頃 道徳の授業で
トマホークというミサイルの映像を見せられた
昼休みの図書室で
「はだしのゲン」を読んだ
全身を包帯で覆われた母親が
生と死の境目で
息子の名を
とぎ ....
化膿したにきびをいじる
傷跡が残る
あわてて薬をぬる
受話器に手を伸ばし 君を励ます
受話器を置いた後 互いの傷口はひろがる
醜く口をひらいた{ルビ腫瘍=しゅよう}が 闇に 笑う ....
曇り日の
凪いだ海に漂う
うつぶせなサーファー等の上に舞う
アホウ鳥の{ルビ呑気=のんき}な飛翔を眺めつつ
{ルビ理由=わけ}もなく
「にたぁ」とほほえんでみる
僕は
もう
疲 ....
新宿の路上 ヒッピーをきどる若者達は
ダンボールひいて妙な感触の良さを味わい
くだらないトークを楽しみ
夜明けを待つ 真夜中の歌舞伎町
消えぬネオン街に行き交う人々
ぎたあ弾き語る路上 ....
土曜日の夜
賑わうレストランの
窓越しに一本のポプラが
誰にも気づかれず
静かなものごしで
あるべき場所に立っている
時折吹く夜風に
大きい緑の葉を揺らしながら
今迄にどれほどの ....
「お先に失礼します」
の言葉を交わしあう金曜の夜
今週もなんとか無事に働けた自分に
「おつかれさん」と一人つぶやいても いい
自分の肉を
飢えた{ルビ乞食=こじき}に食べさせ ....
昨晩瞬いていた満天の星屑が
ねむってた間に降ってきて
昼の七里ヶ浜の海にきらきら光る
昔々
女がりんごの実をもいで
男に蜜をあげました
人祖の罪で失われし楽園も
秋晴れに江 ....
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