ふらふらと酔っ払いの千鳥足
さみしがり屋のピエロは口笛吹いて
今宵も月夜の道を歩いています

膝を落とし 手を差しのべ 愛を乞う
寒がりな裸の心を胸に{ルビ潜=ひそ}めて

夜空 ....
{ルビ痩=や}せっぽちな
私の体の奥のほうで
一匹の虎が
牙を光らせ吠えている

今にもこの胸から溢れ出しそうな怒りの炎が
魂の{ルビ器=うつわ}を青い光で染め上げている

 ....
人は誰もが
{ルビ完=まった}きできそこないであり
どこへ行っても人の輪へ入れば

金曜の夜の飲み屋では
ぶーすか ぶーすか {ルビ愚痴=ぐち}っており

海の向こうでは今もなお
 ....
{ルビ時間=とき}の無い惑星の
始発駅で発車のベルは鳴り
無人の汽車は走り始める
満天の星空の下
砂丘の果てへと続く線路の上を
男は車窓から夜空に小さく瞬く地球を見ている

「無限の宇宙 ....
昼食を食べに近所のファミレスへ
夏の強い日差しの下
ふらふら自転車をこいでゆく

クーラーの効いたファミレスに入り
腰を落ち着けると
壁に取り付けられたテレビの中は
ニューヨーク・ヤンキ ....
明日の朝も僕は
バスの後部座席に重い腰を下ろしては
昨日のメールで君が励ましてくれた言葉を思い出し
リュックの中から取り出した本を開いて
挟んでいた君の写真をみつめるだろう

遠い町に住む ....
弱気の虫がうじうじと
しめった胸の内に這っていたので
気分を変えようと散歩に出かけた

公園には木の幹の周りを
丸い木目のいすで囲んだ優しい木陰があったので
荷物を降ろして腰かけた

 ....
富山から鎌倉へ帰る旅の終わりの朝
旅の宿を貸してくれた
姉が作ってくれた目玉焼きを食べながら
居間の床に座る3歳の{ルビ姪=めい}が
赤いリボンを頭につけたキティーちゃんのぬいぐるみに
話し ....
3歳の{ルビ姪=めい}が
遠視矯正めがねを初めてかけて
鏡に映る見慣れない顔とにらめっこ

「似合うよ」

後ろから見守るママが言うと
にっ と{ルビ微笑=ほほえ}む君の目は
人よりも ....
老人ホームの送迎車から
半身{ルビ麻痺=まひ}で細身の体を
僕に支えられて降りたお婆ちゃんは
動く片手で手押し車のとってを握る

傍らに立つ僕は
宙ぶらりんの麻痺した腕と脇の間に ....
霧雨の降るぼやけた朝の向こうから
「夢の国行き」と{ルビ記=しる}されたバスが近づいて来る

後部座席の曇りガラスを手で拭くと
数ヶ月前に世を去った
認知症のゑみこさんが住んでいた{ルビ空家 ....
あの頃 夢の方角が記された地図を胸に抱いて
光る線路の上を閃く流星の姿で走り抜けた若人よ
気まぐれな強風に振り落とされた君は
いつしか線路上から姿を消してしまった

「腐った瞳の大人にならぬ ....
私は今まで通り過ぎて来た
広大な荒地の上に黒い血を吐いた
無数の遺体の傍らを

倒れかけた木造の家の
ベランダに干されたシャツが
突風に身をよじらせ
空に飛んでいく様を見ては
鈍い心 ....
テレビの中の日本列島は低気圧に覆われて
天気予報によれば明日は「曇りのち雨」
明日も見えない荷物を背負い
傘を手に門を出て行く人々の上で
無表情な曇り空には
ぼんやりとしたかみさまの顔が浮か ....
歪んだ陶器のティーカップに
微かに波打つ紅茶の中で
{ルビ一塊=ひとかたまり}の砂糖が溶けてゆく
長い間 抱えていた悩みのように

「着々と時間が解決してるじゃないですか」

カウンター ....
あてもなくふらつく夜の地下道
家の無い汚れた列が うようよと 笑ってる
バケツに入った配給の{ルビ雑炊=ぞうすい}を待ちわびて

地上への階段を登る
雨に濡れた新宿ミロードの傾斜を
危う ....
朝の駅の構内で
改札の向こうからホームの階段を上る
黒い制服の青年が障害を背負う体を傾けて
こちらに向かって歩いて来る

眼鏡の奥の瞳には
いつも光を宿らせて
不器用な歩幅を
一歩  ....
親愛なる詩友へ

友よ、あなたが今心から愛する{ルビ女=ひと}と出逢い、
日々幸せに包まれていることを、
僕は嬉しく思っています。

僕なりに感じることですが、
「芸術家」「詩人 ....
自らの愚かな手で
目の前をさえぎる沼を
つくり出してしまった時は
でくのぼうとなって立ち止まり
かけがえなき友の背後から吹き抜ける
風の言葉に耳を澄まそう

私は木になりたかった
幾 ....
今までの僕は
美味しそうな料理を画用紙に描いては
「夢」という文字を隅に添えて
誰も訪れないギャラリーの壁に飾り
寂しい腹時計を鳴らす空っぽの胃袋を
満たしたつもりになっていた

見上 ....
よく晴れた昼過ぎ
満開の桜の木陰にすいよせられて
黒い幹に{ルビ凭=もた}れ腰を下ろしていた

桜の花々は音もなく風にざわつき
ふと 辺りを見わたすと
桜の{ルビ蕾等=つぼみら} ....
心が暗雲に覆われた時には
「透けた空から見守る誰かのまなざし」に
自らの汚れた卑小な裸の心を
ありのままに投げたしたくなる

そんな時、友の顔を想い浮かべては
いつかの語らいの夜を思い出す ....
かみさま
大人になった僕は
ずいぶんと長いことあなたのことを忘れていたようです。
時に僕はあなたの姿を見たいと
{ルビ只=ただ}、無力な両手を組み合わせては空に向け
一心にお祈りしています。 ....
君があまりに軽やかな足どりで
振り返る笑顔だけをのこして去ってからというもの
ふいに さびしくなり
しばらく忘れていた「 切なさ 」が
僕の体ごと ソーダ水の緑に染めあげて
炭酸の小さい泡が ....
今朝も電車の中で
僕はすし詰め
くたびれた背中のお米達に
すき間なく囲まれて
まぐろの気持が少しわかった

目を閉じると
あのきれいな木目の板へと
運ばれてゆくのを感じる

「 ....
鈍く光る銀色のドアノブをひねり
といれに入ると
窓辺にはうす桃色の{ルビ薔薇=ばら}が咲いていた

水色のすりっぱには
背中合わせのふたり
男の子は贈る花を背に隠し
女の子は四葉のクロー ....


「柴又ぁ〜、柴又でございます」

京成の電車を降りて{ルビ瓦=かわら}屋根の駅を出ると
前方には旅に出てゆくとらさんの像が{ルビ凛=りん}と立ち
柴又の町を振り返り、みつめている
 ....
今年も忠犬ハチ公の周囲には
いくつもの吊るされた
ハート型のイルミネーションの下で
サンタのおじさんがテレクラの
ティッシュを配る

スクランブル交差点の信号が青になり
流れゆく恋人達 ....
右手にもったきゅうすを傾けたら
青い湯飲みの底に花が咲いていた

一瞬にして
そそがれた緑のまどろみの下に
花は消えた

この湯飲みで
数百杯の茶を飲んでいるというのに
知らなかった ....
深夜の駅のホームを飛び降りて
線路の上に独り立ち
北風に吹かれながら
オリオン座の方角へと吸い込まれるように
敷かれた線路の向こうに待つ明日を
全ての葛藤を貫ぬいて光る眼差しで{ルビ睨=にら ....
服部 剛(2148)
タイトル カテゴリ Point 日付
月夜の散歩自由詩16*05/7/21 1:33
月へ昇る虎自由詩8*05/7/21 1:31
深淵に響く足音自由詩8*05/7/16 21:59
夢の汽車に乗る人自由詩3*05/7/12 0:01
ボールパークに夢を 〜海を渡った侍 松井秀喜に捧ぐ〜自由詩6*05/7/9 21:58
天の川に架かる橋の上で自由詩5*05/7/3 21:36
木陰のひととき自由詩3*05/7/3 21:35
旅を終える朝に自由詩8*05/7/1 20:58
旅先の夜の灯火自由詩6*05/6/29 21:17
手像の指自由詩9*05/6/26 20:03
消えた背中自由詩8*05/6/23 21:50
線路の枕木に伝う音自由詩5*05/6/21 17:00
時の無い都市自由詩7*05/6/20 20:21
幻の人柱 自由詩2*05/6/17 23:55
Cafe Le Poete自由詩3*05/6/17 12:00
心ノ種自由詩6*05/6/13 20:28
傾いた背中の青年自由詩10*05/6/6 19:58
詩人の幸せ・不幸せ 〜詩友への手紙〜散文(批評 ...9*05/5/26 23:33
羊雲を仰いで自由詩14*05/5/25 19:10
空の料理人さん自由詩3*05/5/22 19:51
桜の蕾を手のひらにのせて自由詩10*05/4/30 0:04
「約束の日」の彼を胸に自由詩7*05/4/26 16:18
屋根の上に寝転んで 〜かみさまへの手紙〜自由詩9*05/4/24 13:35
箱のなかみ自由詩4*05/3/26 0:30
すし詰め自由詩11*05/2/28 18:35
といれのかみさま自由詩6*05/2/24 12:21
風の寅次郎自由詩12*05/2/21 17:22
聖夜の空に 〜’04 12/24 @ Sibuya〜自由詩1*05/2/18 20:35
顔のうらがわ自由詩10*05/2/13 19:29
迷える若人へ ♯2自由詩8*05/2/5 13:13

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