思い出が劣化する
音も色も失った浜辺
貝殻に耳をつけて
波音が聞こえたことなんか
ただの一度もなかった
青白い顔の人々が
忙しなく泳いでいる
新宿二丁目交差点
人波に飲まれないように
君と手を繋ぐ白昼夢
酸欠気味の僕へ
人工呼吸のキスを
頂戴
鼓膜の柔らかい部分
ふいに響く ....
静寂は痛みを内包する
そう教えてくれた君の
頁をめくる指先を
真剣な横顔を
心の底に沈めて
眠らせる記憶
らせん階段を登り
3階のキャレルへ
君の残り香を探す
八月の図書館
....
あの人の奏でるベースの音が
腹に響いて
湧き上がる感情に
名前を付けるのをためらった
本当はその指で
乳首を弾いて
あたしを高い声で
啼かせて欲しかった
腹に響く重 ....
響く蝉の鳴き声
からみつく湿度
伸びる影を踏む
緑が眩しい午後
瞼の裏に
あの人がフラッシュバックして
立ち眩む
溶け出す思い出に
輪郭が歪んでいく
響くあの人の声
....
ひぐらしの鳴く午後
伸ばした手が 君に触れて
ありふれた言葉を誓う
「ただ 光の降る場所の
ルールに従って生きよう」
土砂降りの校庭から
駆けてきたあの人の
透けた鎖骨に
胸の筋肉に
魅せられた
あの夏の日
頬を染める
息を止める
激しく脈打つ
濡れたカラダを巡る
あの熱の正体に
気がつ ....
泣き出した空
咲き乱れる紫陽花の青と
君の広げた傘
滲んだ視界に滲まずに
揺れる
君のてのひら
灰色の街へ
遠ざかる傘の花と
君の背中に祈るよ
君に花の枯れないように
....
雨に濡れたアスファルトの上を
自動車が走っていく音
さよならの言葉で
今と未来とを繋ぐ
通り雨みたいなものだったんだ
やがて虹を映して
あの人の傘をひらくと
あんまり大きくて笑えた
ジャマじゃないの
と聞くと
あの人は静かに笑った
あの人の傘の中は
しんと静かだった
なんだか安心で
雨なのに
心強くて
それはきっと ....
そう君は
通り雨みたいなものだったんだ
たくさんの染みを僕につけて
そう君は
通り雨みたいなものだったんだ
いつかは去って染みは消えて
立ち尽くす僕を困らせて
乾いた心を ....
予定のない日曜日
雨続きの週末
部屋の隅あぐらかいて
六弦をいじり回す
干せずに湿った布団みたいに
身体がひどく重いんだ
代わり映えない毎日
部屋を満たす湿度
そのせいか愛猫は
....
朝焼けが星と月とを溶かすから
君の左で 右手繋いで
ふとんから はみ出した腕の白さに
はっとする朝
夏が始まる
この夜が朝に染み出て消えぬよう
追いかける日付変更線 ....
おいかける長針と短針
はしり疲れる毎日でも
よあけの街が
うつくしいのは
希望を灯し続けるから
川べりを歩くように
線路沿いを歩く
この街はせわしないから
列車に幾度も
追いつかれては追い越される
たくさんの人の思いが
列車に乗って
近づいては遠ざかる
まるで別の時間 ....
なつかしい夢を見た朝
つらなる妄想と願望に
のどが渇く ひどく
あの人のいない現実と
さっきまで居た、という感覚
纏わりついた汗が一瞬で凍る
もう 外はあおぞら ....
銀色の箱に詰められて
僕らの朝は出発する
おじさんの油の匂いも
おねえさんの香水も嗅がないように
僕らの鼻は退化する
ぎゅうぎゅうに押されても平気です
厚い脂肪が守ってくれます ....
初めての朝は海の中で目覚めた
期待に似たものに満ちた光と
生まれたままの姿で
あの人と二人浮かんでいた
私はすごく幸福で
そうして少し悲しかった
こんなに幸福な朝は
二度とこない ....
白く清潔な四角に
閉じ込められる夜は
寝返りばかりうっている
シーツのまだ冷たい方へ
まだ冷たい方へ
そうして考える
あの人の隣りにいた頃は
右向きに寝ていたんだっけ ....
みっしりと命を詰めた白い箱
マッチの箱のような病院
その腕に繋がれた管 カラフルな
命の綱か
あるいは枷か
真っ白なシーツの上で
しぼんでく 風船のようだったおなか
....
アイシテル コロシタイ程 調理中
信じてくれる? 毒でも盛れば
パパとママ 他人同士が向き合って
醤油のしみを 重ねるクロス
ビールでも買ってくるよと出て行って 三年帰って来な ....
ごっこ遊びに飽きた日
まったなしの連続を
戦うことに決めた
でたらめな今日の延長に
譲れない未来を描くまで
なけない夜にため息
まだ言えない言葉がある
たくさん笑ったこと
まちあわせた駅前
ごほんの指の温かさ
かえらない想いを温め続ける熱
さよならって言えなくてご ....
明日に嫌われる魔法があれば
まだここに居られるかな
言い訳が効かない夜
笑われないよう必死で
何度も口づけを交わして
疑いを持つ正当性
それを主張する弱さ
突き詰めて考えたら
気持ちはもう
残ってなかったのに
うすべにの
空を覆うのは憂いか
月が淡く浮かぶから
気がつけば泣いてた
「悲しくしないで 側にいて」
嘘をつくことに慣れたのは
そうなるしかなかったから
うつむいたまま歩くのは
それが楽だと知ったから
薄汚れた街の
騒々しい波に
打ち付けて削る
粗悪品の僕らを
生まれ変 ....
さよならの甘美な響き
乾いてる心に染みて 砕く波間に
ひとつだけ
あなたの見せた夢ならば
永遠という嘘から覚めない
朝までにあなたの見せる絶望と幸福のあいだを三往復
....
重ねた足跡は
ガラス越しの瞳に
醜く映りましたか?
放せなかった冷たい手を
懐かしんではいけませんか?
見上げた空から降る雪
ずっと昔別々に見た白
続かなかった足跡でも
消 ....
目をつぶっちゃえばさ
右も左もわかんないのに
前進と後退に縛られる
決まり事が多すぎる
朝 昼 夕
耳を塞いで電気を消せば
頼れるのは右手の熱だけ
番組が始まる前の砂嵐って
....
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