晴れた日、歩いていた。ビルと高速道路に挟まれた、歩道。国道246号線。東京で一番空が汚いらしい。それでも、空は青い。風が乾いている。もうすぐ冬だった。空も乾いていた。狭い空。見上げる。目に映るのは、 ....  今まであったものが、全く違って見える。かつて「他人だった自分」が、空に浮かんでいる。「自分」は近づきすぎてはいないか。遠くから見る月に。いつしか視ることで触れたのではないか。月を。触れる。接点が生ま ....  夜明け、静かな街に若い男性の笑う声が響く。ビルとビルの間を反響しながら明るくなった空へ放たれる。カラスの漆黒の鳴き声。かすかな雀の声。ゴミ収集車のエンジン音と世間話。夜勤明けだった。体は疲れていただ ....  それからどうだったか。愛の告白をした友人は二度とナイフを手首に添えることはなかった。彼が命を賭して口説き落とそうとしても、誰一人として落ちる女性はいなかった。それが、たった一夜限りの関係であったとし ....  彼女は体を後ろに仰け反らせた。酒が頭に回ったようだった。ぐるっと頭を回す。目の間のお菓子の袋を開けるのに夢中だった。乾き物の袋を。友人の一人がベランダから大声を上げる。冬の冷たい風が部屋に入る。夜は .... 記憶にある顔は、少し老けたようだった。変わらないといえば変わらないのだろう。彼女は自分の子供を抱き上げる。夫と子供と3人で暮らしている、と彼女は言った。部屋は決して大きくはなった。むしろ3人では狭く感 .... 改札を抜ける。
地下通路を歩く音が響く。駅員のアナウンスが流れる。
耳を傾けるものはわずかだった。
人ごみは無関心だった。そうあろうと努めて。
息を深く吐いた。立ち止まる。
カバンを持った手 ....
男は、路上に寝ていた。
液状の粒子は溶ける。空に、
もしくは、アスファルトに。
学生は鼻をつまんだ。ブラウンだ、
と。
確かにそうだ。高速で振動する粒子。
過去も未来もごちゃ混ぜにする。男 ....
老人はジャケットを放り投げる。ブルー
など捨てた、と。階段に腰を下ろす。
確かめる。苦笑う。ブルー
のジャケットは、世界を滅ぼそうとしている。
警察が走る。
知っているほうがよかったんじゃな ....
千歳空港から羽田空港までの約一時間のことだ。下降を始めた飛行機の窓から外をのぞいていた。新木場の臨海公園だろう。夜の街に輝く観覧車が見える。その横は真っ暗な海が広がる。観覧車の光は海をわずかにでも .... 黄金の蛙、まだ遥か未来。
遠ざかる赤は、地に落ちて鳴く。
高校の校門は、閉じられたままだ。
風に、夜は襲う。追いつけよ。
追いつけ!
この水と、黄金の蛙、
夕暮れまでまだ遥か未来。
交差点を通り過ぎる。西新宿、この水を。
気づいた人は耳を塞ぐ。
突き上げられた、虚勢。無視する、声を。
波紋の役にも立たない、この水を、
流す川が見当たらない。集める川が。
コンクリートの下 ....
ダニエルは犬だ。ゴミ箱の前で、線路の影で、
夜を待っている犬だ。月が湿っている。赤くなる
空の前で、ゴミ箱がぼやけている。陽炎の
中のダニエル。ゴミ箱は青。霧雨も
降らないのに、電車は光をつけ ....
無数の波紋が浮かんだ。
灰色の彼方。
小声で鳴く魚。
境界を越える。
雨は川に降る。
雨は海に降る。
けれど、海の向こうまでは続かない。
 夜が明けた。風呂なしアパートの一室にも太陽の光は差し込む。隣で友人は眠っていた。友人は寝言を言う。遠くで鳴く雉の鳴き声のような寝言だった。友人を見る。友人は眠ったままだった。パソコンの画面が光ってい .... よく晴れた日だった。
午後から大雨になる、と朝のニュースは伝える。

午前中に駅に着いた。
駅前だけが、寂しく栄えていた。
少し歩くと住居が立ち並び、
田畑も見えてくる。

約束まで、 ....
 港は、夕暮れの薄いピンクに覆われていた。人の往来はない。寂しさが漂っていた。一時間に一本しかないバスが、つい今しがた出てしまった。倉庫が立ち並ぶ港に一人残された。営業用の道具を詰め込んだ旅行カバンが .... 名古屋から豊橋に向かう途中の小さな街だった。何よりも高く、観覧車はそびえ立っていた。その観覧車は、遊園地にある類のものではない。突如、街にそびえる類のものだった。入り口付近には、一人の老いた男が箒を手 .... {引用=自分の外の世界の利害関係は、いまやあまりに難解で考えようもない。人々は感覚を捨てて興奮に走り、何が何でも楽しもうと躍起になっている

「囚人のジレンマ」 リチャード・パワーズ著   柴田元 ....
 白布温泉から急激に下る坂道を男は走っていた。全長5kmの第6区。男の肩にはピンク色の襷がかけられている。男の走る周囲には葉の落ちた木、杉の木以外目に付くものはなかった。男のペースが上がる。前を行く選 .... 同級生の彼女が死んでしまった、次の次の日だった。僕らは彼女の葬式のため、彼女の家へ向かった。彼女の両親が仏前で、笑って出迎えてくれた。僕らは一同そろって、その前に坐った。順番に彼女への線香をあげた。線 .... {引用=或いはまたほかの上官からすでに彼はダメだと烙印を押されていながらも、なお自分では無心に空しい努力をしている兵隊を見る時、可憐だと思う。彼らにだって彼らの世界はあるのだ。彼らが誇りかに自己主張す .... {引用=そこは桜の森のちょうどまんなかのあたりでした。四方の涯は花にかくれて奥が見えませんでした。日ごろのような怖れや不安は消えていました。花の涯から吹きよせる冷たい風もありません。ただひっそりと、そ .... {引用=実り豊かに微笑する大地であり、アジアのアルカディアである。自力で栄えるこの豊沃な大地は、すべて、それを耕作している人々のしょゆうするところのものである

日本奥地紀行  イザベラ・バード  ....
{引用=そうなんだ。ついいましがた帰ってきたばかり。あんたと電話で話してから10秒ほども経たなかったかな。今手洗いに行っているから、その間にあんたに電話しておこうと思って。ほんとにどうもありがとう、リ .... {引用=走れ、ジミー・デラクロイ、息はさんざん乱れ、横腹に針が刺さったごとくに痛んでも。何が迫ってきているのかと、振り返ってはならない。走れ、お前の足下の都市の輪郭がぼやけてくるまで、恐怖に、なじみの .... 思い浮かぶのは、熱が反射する道の景色だけだ。一日が熱に溢れている。記念日が連続すればいい。連綿と続く記憶のように。忘れることを強いてもなお、忘れることができない生活の一部になるように。歩く動作のように .... 湿った手の平がうっとうしかった
道には熱が漂っている
怠けた歩行者たち
通りすぎる自動車
吐き出される熱が見えるようだった

赤くなる空
血を吐く空の結末は
誰もが知っている毎日
繰 ....
光に閉じ込められた生活が、並んで歩く足音に消える。
思い出したように振り返ると、手が、男の手に触れた。
生まれたのは間違いじゃなかった、と泣きながら繰り返すテレビの声に、同情したのかもしれなかった ....
与えられた三つのだんごが
汚れた着物の中にあった。
公園に生えた草をむしりとり
走り去る自動車に向けて草笛を吹く
誰にも向けられない目
こっそりとおかれる週刊誌は
一日分の給料と同じだった ....
ブライアン(133)
タイトル カテゴリ Point 日付
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レッド:西口地下広場自由詩108/10/8 21:53
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ブルー:最終兵器自由詩1*08/9/27 0:30
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ダニエルは溝の中自由詩9*08/9/14 18:10
この水は、自由詩008/9/11 22:08
回覧車Ⅲ散文(批評 ...308/9/10 21:48
この水、自由詩208/9/8 0:17
回覧車Ⅱ散文(批評 ...008/9/6 13:47
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知ってるほうがよかったんじゃないのか?自由詩508/7/26 16:25
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