同じ沈黙でも

声が途切れる
そしてまたその声も
しかしまだ口琴を鳴らした手は
動いている
ゆっくり下に
降りてくる
見守る静寂は張りつめている

溶暗―すべての人工的におこし ....
アスファルトの歩道の隅から
コンクリートの無骨な電信柱が
びゅーんと垂直に伸びていて
アスファルトとコンクリの
わずかなすき間の土から
緑の草がどーんと伸びている

この伸び方は尋常でな ....
だだッ広く真夜中
合宿中の体育館
暑ッ苦しく白昼
高校生たちの汗
熱く寝苦しい

名前だけの顧問である私はその夜だけ代役で泊まることになった私が昼間健康的な熱気あふれた誰もいない体育館の板 ....
地上の路地では
クリスマスをとうに過ぎたというのに
3軒の家で
電飾をちかちか灯しつづけている

1軒の家は青白くひかり
1軒の家は橙色にひかり
1軒の家はジグザグに光らされて

屋 ....
旅するほど長かった。
苦しさと難しさ。
例えようのない緊迫感。 
左飛は永遠に落ちてこない
わっ、すべてが選択されてしまった
これが10年の低迷を破る試練だろうか。
起き始めた一喜一憂
 ....
日も落ち
かすかな赤みを帯びた
山の稜線は
長く横たわり
うすいベールが覆った
やわ肌のぬくもりであり
頭をあずけたいふくらみあり
――母の抱擁ではけっしてない
いわば倒された女体
 ....
ヤマが見える
ヤマが近づく
ヤマが眼前に迫る
ヤマである
ヤマがふわふわと
   どかんとある

ヤマの成分は積み重なりである
   紫や青や茶や
   白や黄や黒や
   いろん ....
君の方が知識があります
だって君は受験生だからです

年賀状の束が誘拐されたのには理由があります
すなわち抽選日を十日まちがえたのです

この部屋は明るいのに
天井が下がってきます
 ....
間歇的な音がする
時計の音か
雨滴の音か

寝息の間歇
クレッシェンドする息吹

汗が噴き出
腹も鳴る

起きあがると
もう聞こえなくなる
腹の中のリズム

さぐられずとも ....
まあたらしいビルが見える
壁一面オレンジ色だ
こぢんまりとして
建っている
括りつけの看板はない
業種もわからぬ
中の人種もわからぬ
ゆいいつ手がかりになるものは
塗りたくったような店 ....
準工業地域を抜け
畦道を抜けると
大きな門構えに
由緒ある大ケヤキ
 
視線のかたすみに
逃げる影

それに引かれて
すこし歩いてふり向く
ふり仰ぐ
好々爺の大ケヤキ

椋鳥 ....
三つの
白い
華奢な
曇り空を透かすような
濁酒を清涼飲料にするような
涙ぐましい
冷酷な風に叩きつけられようとも
巨大な金属物体に煽られようとも
明るく微笑 ....
急な坂道を
老婆がひとり
のぼってゆく
過去からの滑り台を
逆にのぼっていく
小高い丘の先は見えない
赤いものに追いこされても
老婆はいつまでも歩いてゆく
後ろ姿しか見えないので
ど ....
さるもすべる空のもと
街路にさるすべりの木
つよい色香を
はげしい陽光で
まっかにむれた
花群
あこがれの女優が
かいまみせた
きゃしゃなうで
さわってはこわれるような
すこしめく ....
イカが身投げをするという
夜も明けきらぬ浜辺に
それは自分のせいではない
波のせいだ
卵を産み子孫を残すには匂いが必要だった
深い海の底は何も匂わない
母たちは求めて浮上する
そして波に ....
しんしんと暮れる
鋪装された畦道
闇は深い
そこだけ光を発して
闇を解かしていた
黄金の小びとたちが住む
断崖のうえの古城のような
冷たく射る巨大建築物の登場
壁は虚飾された白色に塗り ....
同居する姪が言った
はっきりいって
このなまえ、
好きじゃないから
妻はこわばって
なにも言わない
わたしも言わない

テレビのバラエティ番組で
それは最も良心的なうちの一つだった
 ....
冷たさが汗ばむころ
いつもすれちがう
茶色のサングラスをかけた
年長けたおじさん
ときどき目が合うような
ちらと見るような
わたしは意識する

その数分後
いつもすれちがう
グ ....
まっすぐ立っている木はまぶしい

森は黙っている
しゃべれないから
森は呼吸している
風を吸ったり吐いたりしている
森は生きものを呼ぶ
にぎやかに
森が拒絶するものは何か
なにもない ....
日が真上から射すころ、そいつは塀の上にいた
眠そうな眼をしていた

日が斜めから射すころ、そいつは道路の真ん中で
後ろむきに佇んでいた

日が沈み空が真っ赤に染まるころ、そいつは仲間とじゃ ....
幼女を連れて
遠回りをして
橋を渡る
大雨で増水した川面は
ぐろぐろと濁っていた。
どす黒い鯉が2〜3匹
口をむやみに開け
潜ったり浮いたり
眼球を妖しい口に
吸い込まれる直前
気 ....
映画「殯の森」で、山間のグループホームを訪問した僧侶が彼に言った。
「奥様が亡くなられてから三十三年になります。
死後三十三年たつと、その方は仏さまになられます」
認知症の彼は森に入り、三十三年 ....
どんと一発ぶちかまされて
裏一面の穀物畑
なだらかに挟まれて
おじさんの古い農家につづく道

素直に手を引かれていた男の子は
急に独楽で遊びだし
ぶんぶんうなって動かない
洞窟のような ....
胃液が沸騰
ぐつぐつ
小爆発を繰り返しながら
ぷつぷつ
重い重い
頭にも響く
じっじっ
眼鏡の蔓がひるむ
ひっひっ
うずくまる自分の影

猫のまるい背中に
笑われている
ネット氏 は
ネット師 として
ネット士 たる
ネット紳士 の
ネット使者 が
ネットリ して
ネット市 で
ネット死 した
ネット史 を
ネット誌 に
ネットシ と
ネット視  ....
――ゼウスがパンドラに持たせた、あらゆる災いの詰まった箱(本来は壺)。彼女が地上に着いたとき好奇心から開けたところ、すべての災いが地上に飛び出したが、急いでふたをしたので希望だけが残ったという。

 ....
エフェクトマシーンのような空
卵の黄身のような月
白い雲にさえぎられ
引っ込んだり現れたり
うなぎがビーカーから飛び出す
不穏な夜
まぶしいまぶしい
夜なのにまぶしい
白い雲がなまずの ....
とおく
とおくから聞こえる
もぞもぞしたごとごと
とおく
とおくに見えだす
かげろうの壁の向こう
雲のすきまからはみ出した光にゆびさされ
銀色に青い線のはいった電車が走りだす
鳩が30 ....
風吹きすさぶ
いちめんたんぼ
古代からつづく広い空
一匹の虫は泳いでいる

とつぜんに
ふしぜんに
屹立し現れる
高層ビルの群れ

一匹の生物すら寄せつけぬ
冷たい石でかためられ ....
下高井戸駅で
ドアが開き
一斉に
すわる人
みわたすと
ひとり用の椅子ばっか
顔はみな
一様に
そしらぬふり
うつ向きかげん
がまんされたくすくす笑い
わざと行儀よく
おしゃれ ....
tomtom_poem(30)
タイトル カテゴリ Point 日付
沈黙自由詩113/2/6 1:21
電信柱の陰からゴジラが顔を出した自由詩313/2/2 2:12
真夜中の体育館自由詩210/9/2 0:59
イルミナシオン自由詩209/9/20 0:04
月を撃ちおとせ自由詩009/4/23 1:51
遠景自由詩109/4/11 21:49
くずされるヤマ自由詩009/2/14 18:09
試練をくぐる者へ自由詩009/1/16 1:48
リズム自由詩009/1/6 1:26
HAIYA自由詩009/1/5 0:55
門沢橋6丁目通り自由詩008/10/26 0:53
白い花自由詩108/9/3 0:38
急な坂自由詩508/8/27 0:44
蝉と木自由詩008/8/26 22:06
イカ・セミ・バッタ自由詩308/8/25 23:38
不夜城自由詩008/2/14 22:52
脱皮自由詩008/2/14 22:38
意識とぶ〜すれちがい自由詩007/11/9 0:32
 森自由詩007/11/2 0:21
秋の風景〜猫自由詩107/10/28 0:24
自由詩207/10/27 23:21
三十三回忌未詩・独白007/6/25 1:54
昔の話自由詩007/6/7 1:14
胃液——暗殺Ⅱ——自由詩007/6/5 0:13
暗殺自由詩007/6/4 1:03
パンドラのヨンさま自由詩207/5/22 1:38
明るい空自由詩107/5/21 0:41
電車が飛びたつ自由詩207/5/19 21:35
空中楼閣自由詩6*07/5/18 22:53
世田谷線自由詩4*07/5/18 0:24

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