神秘に貫かれ
漆黒の夜が来る
ただ唯物の
儚い世を散らし
永遠が口を開く
ちりちりと吹く風
脳髄を縁取る陰影
意識清明に保たれ
夢は胎動する
静かに
いつしかの
岸辺を目 ....
あめいろの
時が過ぎ行く
この夕べ
わたしの孤独は宙に溶け
一閃する光の海
瑪瑙の渦は天を駆け
静かさだけが降って来る
気の遠くなるよなこの時に
静かさだけが降って来る
....
誰かがシャワーを浴びている
雨はすっかり止んでいた
林檎を囓る少女が独り
光は妙に屈曲して
迸る水を艶かしく
向こうの鏡に映していた
今夜は早々と眠りに落ちる
明日はきっと晴れる ....
あゝもう一歩を押し進めよと
心の声が波紋を広げ
此処に在ることのまた不思議
火炎噴き上げ迫り来る
冷たい岩に乗る足の
感覚だけに
集中し
広がる意識に楔打ち込む
今望郷の念、込 ....
なにかを
忘れている
ようなこの夜に
なにかが
湧いて来る
ようなこの夜に
向かいの家の台所の
橙色のランプが点いて
それが仄かに懐かしい
光跡を辺りに散らしている
なにかを
....
わたしの苦しみは
わたしの苦しみ
あなたには体験できない
あなたの苦しみは
あなたの苦しみ
わたしには体験できない
この世界の美しさは
この世界という美しさ
わたし達は体験でき ....
かなしみの
青が降る
透明、
ただ透明に
なっていく
己の体
幾億もの幾兆もの者達が通った道
途、未知、溢れ
枯れ果て、移行する
光の奥の
ふるふる震え揺れ
時の間隙縫い
開く ....
僕が世界と繋がるために
涼やかな夜風を浴びながら
今日も一つの詩を書き留める
それは静かな吐息をついて
雨降る白壁に投映される
夢の間に間の幻灯機
巨大な毒蜘蛛を追いやって
雨滴を溢す紫 ....
夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪山へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く
鈍色空を背景 ....
宇宙に咲く花のように
秘かに青白い、
アジサイの花房濡れる頃
神の手が伸びて来る
雨降る季節を進めるために
無限を響かせ、無限が響き
鮮やかなアジサイの、微かな揺れに
一つの確か ....
夜風を浴びる、眼を瞑り
うっとりとして、遠い汽笛の音を聴く
夜風の冷気に、夜風の霊気に
何かがざわめき蠢いて
網戸の向こうに、唸る街
ゴォーッと木霊が反響し
波打つ孤独な内面が ....
うつくしい
ものが
欲しい
むさぼるように
あるいは
沈み込むように
この涼やかな
夜風を浴びて
半ば発狂し
半ば落ち着き払い
細胞の、一つ一つが覚醒し
脳髄の、うっとりと微 ....
しおれた花の残骸が
赤茶け風に揺れている
昨日まで芳香を放ちながら
今は萎びてうつむいて
流れていく 流れていく
衰退の相、必滅の法
萎れた花の残骸は
やがて地に落ち来年の
春 ....
世界は夢
夢のなか
さ迷っていた
あてどなく
銀輪は廻り
戻って来る
何度も何度も
同じ場所
途方に暮れた
やじろべえ
帰り道を喪失し
戦慄狂気
均衡保ち
銀輪はひたすらに
....
高い夜空が澄み渡り
晴れてはいても、なんともさみしい
きらびやかなネオンサイン
きれいだけれど、中身はからっぽ
あゝどうしたらたどり着けるのか
あゝどうしたら充たされるのか
途方も ....
戦慄の瞬き、濃緑のうねり
冷え冷えとした岩峰、空に貼り付き
街道に沿って、男は進む
連れの女の乳房は揺れて
朝の四時まで密室に二人
都会から、遥か離れ人影無く
恐怖にすくむ、ガード ....
ついこの前まで
白い花を咲かせていた木が
早くも新緑へと移り変わり
午後の日差しに照らされて
青々と輝き揺れている
その木の根元を
春の青大将の群れが
唸りを上げて進んでいく
....
ちりちりと
夜風が弾ける
肌の面
肉から解離し
タマシイの
涼やか響く
原音が
辺りに木霊し
光っている
脳髄はとろり
蕩けるよう
夜風にうっとり
流れ出す
彼方此方を巡 ....
西の空が
赤銅色に燃え残り
薄暮が辺りを包む頃
俺は拳を握りしめ
一心不乱に進んでいく
胸の奥処に蟠る
抑えがたい不安感に
鼓動激しく息を継ぎ
夕闇の道を進んでいく
西の空が
....
この夜陰、
独り在ることに寛いで
宇宙の時流に乗っていく
すっと孤独に留まりながら
この隙間だらけのあばら家に
雷鳴が轟くのを待っている
境界の門が開く、その時に
意識は異界の木霊に ....
黄色いチューリップが群れをなし
大きな風に揺れている
地平遥か彼方から
沸き起こって来るあの風に
身を委ねて群れをなし
黄色いチューリップが揺れている
うっとりと
蕩けるバターのよう ....
俺は朝から何も食べていない、
ひたすら吐き気の塊だった
静けさに沈む
何もない
静けさに沈む
足場を欠く
俺の肉体と意識は解離したまま、
新緑の芳香をひたすら嗅いでいた
そ ....
降り続ける雨に
深く
深く秘められた瞳
まだ夜明け前に
音もなく迫り来る
もの
群れをなし
閉じられ、見開かれ
保たれ、放たれ
瑪瑙のように
深く渦巻き
浮き上がる
....
稲穂の先のビー玉の喧騒
夢はわちゃわちゃ過ぎていき
白雲もくもく青空に湧く
花の街には太陽燦々
老婆と少女が手を繋ぎ
廻り廻るよ廻り廻る
死の標的を撃ち抜いて
生の目醒めに眩め ....
欠落はせずに
只々遠く平板になっていくもの
追いかけても追いかけても
追いつけない現実に
後ろ手付いて息を吐く
二度と取り戻せない時の堆積
記憶は麻痺しながらも
思い出したように不意 ....
荒波、白波、眼底痛
堪え堪えて書いて書く
笑っておくれよ、地蔵虫
少しの集中で火を噴く目ん玉
だから書けるうちに刻み込む
生きているから痛いのさ?
そんな生半可な答えでは納得せぬ
....
緑濃くなる街道沿いを
進むと終点が反り返り
生死の境がむせ返る
草いきれの香と共
立ち上がる
不可視の世界は余りに遠く
すり減る日々は余りに間近く
カウントダウンの切迫が
歓喜と恐 ....
風は帰っていく
見えない世界へ
この世の熱を帯び
(孤独の歓喜に覚醒し)
極北の地に、極北の地に
すべてを担い
帰っていく
紅いつつじの花びらに
雨滴が留まり
艶やかに
膨らむ、透明の
二滴、三滴、
輪になり
映える
灰の空に
やがて
緩やかに吹く風に
揺られ
つつじの花弁から
零れる雨滴
紅 ....
剥き出されている
神経は逆立ち
風雨に鳥肌立つ
葉桜は激しく波打ち
瞳をくりくりと輝かせた
木登り少女は姿を消した
何にもない、何もない
意味は全て剥奪され
記号だけがひょろひ ....
48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88
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