ポップアートが壁に飾られたバーで、女の細い手首を見ながら
フランス産の安物のワインを飲んだ。不味くも美味くもないワ
インが喉を通り、ただ、飲んだという事実と13%のアルコール
によって私は幸福を ....
朝、足の間を通る冷たい風が頬を撫で、小鳥も寒さに声を詰まらせる。
老人の乗る三輪の自転車に、白く縮れた毛に埋まった老犬が連れられて
いる。その犬は、進む、止まるを幾度も繰り返しながら、ノロノロと老 ....
ぽつぽつと、点を打つ悪が私のお腹の中で浮いて、渇いたくちびるを
震わせる。ひび割れ、皺も硬くなった手を持つ祖母は、重く垂れた瞼
から覗く黒目を更地となった公園に向けていた。朝、通ることが日々
の ....
ミツバチの午後 井坂洋子
恋人に会いにいくときは
緑樹の濃い反射がほしい
幾重にも層をつくる
日射しのプールの水面下
顔をあげると
ミツバチの唸りが耳もとをかすめる
肉体(からだ ....
血が流れた、青髭の家で、――屠殺場で、――円形競技場で。(「大洪水のあと」ランボー、宇佐美斉訳、『イリュミナシオン』所収)
文章には流れがあります。それは、時系列に沿ったストーリーの流れであ ....
もうああいう風にはできないかなと言ったらそうなりそうなので口を閉じて笑った。友人は複雑な色合いの冬のコートを買った、よく似合っていた。
電車には、相変わらず知らない人がたくさんいる。知らないひと ....
タクは札付きのわるだったらしい
大人を信じていない
でも金ちゃんと俺だけには気を許す
稀なことだそうだ
やつが鑑別所にはいったことで
所管の警察はぎゃくに若いやつらのおさえが
効かなく ....
振り返ると、そこには、誰もいなかった。だとしても、Kは走り続けなければならない。実際、立ち止まったそばから――といっても、もう諦めてしまったからその行く末は当然Kにはわかっていたことだったわけだけど ....
ことし一番の冷え込みでした、と滑舌のわるい男が喋っている。昨日と明日の気温や服装について話つづける。雲が、保存のわるい油絵みたいにばりばりにひびわれてそこから橙色がのぞいていて、電気を点けていない ....
マニキュアが零れた。赤いマニキュアは真っ赤な血のように広く伸びて行く。塗り掛けの爪から外れたマニキュアは指を伝い一滴垂れた。千歳は焦ることなくティッシュを除光液に付けて真っ赤な血を拭く。
「くさい」 ....
私はこの公園の風景自体のことを、すでにもう飽きていた。最近私はまた原宿に行ってきた。だが、この街自体にすらも私はすでに飽きていた。イチョウが代々木公園の入り口で舞っていて、そこに落ちた葉はすでに腐 ....
「貧乏なひさし君はいかにして自己実現をなしえたか。」ボツ原稿・自衛隊入隊編。2013.8.25作成
登場人物 前田エリカ(さちん)木下寿(寿)古館七郎(下松)小林陽子(ヨーコ)
白い服の男女( ....
「貧乏なひさし君はいかにして自己実現をなしえたか。」ボツ原稿・就職編 2013.8.18作成
路上
前田 誰か、買って下さい。わたしを買って。3日前から何も食べてません。ああ、お ....
「貧乏なひさし君はいかにして自己実現をなしえたか。」ボツ原稿・高校編。2013.8.11作成
下松医師、看護婦和江
下松 おーい、和江君、これー(書類を出す)
和江 はい、先生
下 ....
「貧乏なひさし君はいかにして自己実現をなしえたか。」ボツ原稿。2013.7.28作成
箱崎中学校、校門前
女教師、体操服姿で生徒指導中
生徒たち、登校している
先生 おはよございまー ....
あれは銀色夏生の詩であったろうと思う。
詩集を探してみたけれど見当たらないから書きようがない。
君は出典を気にするだろうから探しておく。
君が携帯のメールで「月がきれい」と送ってき ....
mixiより転載。
2008年6月28日に開催した朗読会のお礼の文章です。
*****
お客様には、いやってほど我々の愛が伝わったのではないでしょうか(笑)
もし、お腹いっぱいになっ ....
ふと広辞苑がほしいと思った。
いや、学生時代からもほしいとは思っていたのだが、いつしかその欲求は薄れ、また思い出したのだ。
単に国語辞典が必要と言う訳ではない。
むしろ仕事上はなんら必要もない。 ....
私は最近代々木公園を訪れる。この公園は、私は原宿駅のすぐそばという立地の良さに加え、帰りにも買い物に出かけられるという便利さもあって、休日に出かけるのに最適な場所であると思っている。そして、特にこ ....
何かに追い立てられるように、死のようなものを感じながら詩を書いていた。何の意味があるのだろう、それ自体がそこにないことに。けれど何が確かなものとしてあるのだろう。原宿の中を歩き回っている。高校生の頃、 ....
それはたしかあたしがまだ一五だか六のころで、だけどそれが記憶としてほんとにただしいのかなんてまるで自信なんかないんだけど、とにかくその頃。街の外れの、ファンタズムっていう名前のバーだったわ。半地 ....
『ハロウィンの日までは』
最近、目に余る位に恋人の食生活が乱れすぎてると感じ取った自分は、少々可哀想に思いながらも強硬手段に出る事にした。
恋人は甘党だ。
カフェなどに行けば当然 ....
風が吹く。生きなくてはならない。
教会(という名前の映画館(という名前のゲストルーム))に
僕たち読者は座っていて、目の前のスクリーンに、
それぞれ違った夢を見る。
「それぞれ違う」こ ....
暗闇のなかを歩きながら、想像してみた。
僕は、エジプトのあの騒乱のなかにいる。断続的に銃声が鳴り、そのたびに人々の悲鳴や怒声があがる。とつぜん、皆が走り出す。顔色が変わっている。死の感覚に周囲が ....
詩は言語を用いる作品であるが、その伝達においては概念的コミュニケーションよりはイメージコミュニケーションの果たす役割が大きい。もちろん、論理的に明快である詩もあるし、感情が明快に伝わってくる ....
『手紙』
(手紙なんて久しぶりだな)
自分が最後に手紙を書いたのはいつだろうか?
今でも暑中見舞や正月の葉書など形式的な物は一応手書きで書いたりもするが、今や殆どがメールでのやり取り ....
壁にカレンダーが掛けてある。
A3サイズくらいの大きなカレンダーで、今年の1月に会社の応接室の横にたくさん余っていたものの中から持ち帰って来たものだ、
京都の庭園と題されたカレンダーは、上部6 ....
『髪とちっぽけな独占』
「髪、もう伸ばさないのか?」
恋人にそう尋ねてみたのは、折角少し伸ばした綺麗な髪型をもう少しだけ見ていたかったからだ。
恋人の髪はとても柔らかく、艶々としてい ....
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僕が大学4年生の時、図書館実習をしている時に地元の図書館で作業していたある日のこと。
その日の作業は、図書館であまり貸出されることがなくなった図書をリサイクル本として、廃棄された図書の整理 ....
ニコニコ動画を爆心(震源)地に、近年あれほど盛大に盛り上がった「IKZO=吉幾三=イクゾーMADムービー」に関して、いまだまともな批評が殆ど書かれていないことが気にかかる。
音楽の歴史は、ほと ....
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