現実的に考えれば
相手が油断しない限り
大振りパンチで
ノックアウトは難しいものだ
だから
....
胎児の仕事のかなしさよ
望まれたのは一声と
嬰児の仕事のかなしさよ
{ルビ乳=ち}を飲むばかり ....
瀧の夜
火を拾う指
音の無い径
水たまりの径
水の音は鈴
....
切ないね
わたしの世界にわたしは必要、けれど
あなたの世界にわたしは要らない
....
毛布のなかで
太陽が 頭をのぞかせた
わたしはまだ死んでいるから
もう一度 生まれなけ ....
夕暮れ時の寒い裏通り
透き通るくらい引き伸ばされた薄軽い
ビニール袋の中には食材と
もう片手 ....
コンパスのように立て
最初から最後まで
近寄ることも遠ざかることもない
己の中心に
想いは帆 ....
夕方ふと足を止めた
流れ去る風は何処へと向かうのか
気付いたらここまで来ていた
借り物の身体 ....
入院すると
生きる目標が
はっきりしてくる
「退院」という二文字へ向けて
すべてが動き出す
....
いつまでも誰かのそばにいて
猫背で暮らす
二日酔いが始まる前に
冷蔵庫を開けろ
そんでな ....
赤でチェックの模様
赤いカップがついたファミリーサイズ
中はなにが入っているのだろう
見た目よ ....
ボケた!という
自覚のあるうちは
まだだいじょうぶである
しかし
「ボケてない!」
と言う ....
貴方が他の誰かを求めたりしないように
その腕を切り落としてしまいましょう
もう二度と何処かへ ....
月の砂漠のベンチにも誰かが座った体温がある
明るい雨が降る砂漠一輪の誰かの薔薇になりたかった
....
画面ばかり見て患者をよく診ない医者
決めつけるような言い方をする医者
やたらと薬を出す医者
患 ....
横浜駅が増殖する――増幅する悪意(マリス)によって書店に平積みされた横浜駅SFが引き取られていく―― ....
バス乗り場には行き先が書いてある
花が飾ってある
まるで旅程のために生じた偶然のように
....
きみのいた四ッ谷の町に
ぼくだけが今もいるよ
気持ちが津波にやられる
思い出作るし ....
女に生まれた私は誰よりも自分自身の価値を理解していたわ
それは長続きしないものだと最初から分かって ....
鎹
恐竜
石舞
損なわれていく感情の中
ネオンのアリジゴクを歩く
六本目のタバコに火を点けた時
倒錯した売女は ....
21rows, 1.04sec.