68、天使と悪魔 【てんしとあくま】/雨宮 之人
 
或る 陽射しが穏やかな午後
風はゆるやかに 丘を流れる
窓枠に切り取られたその風景の
ずっと彼方を 少年は見ていた

鳥かごの中
「日常」は夢のまた夢
その身には 穢れなき白と
何ものにも染まらぬ、黒をたたえて

窓辺に落ちていた羽は
信仰と、背徳を愛撫して
豪奢な装丁の 書物を紐解くように

背中合わせに 永遠をはらんだ翼を広げ
その羽音は歌となって響いて
少年の眼は 誰のものでもない空を見つめる
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