掌編小説『しゃしんの女』 〜上〜/朝原 凪人
かつての栄華も今は既に衰え、王家の血筋を引くのはこの女主人ただ一人。最後の王族。そこに咲く誇り高き華。そんなタイトルで記事を書くための取材だったのだが、華なんてとんでもない。そこにいるのは、そう、まさしく雪だった。音も無く色も無く、そして、揺らぎがない。命の燃えるともし火の揺らぎとでも言えばいいのだろうか、そんなものが一切感じられない。まるで雪像と話をしてるみたいだ。いや、まだ雪像の方が愛嬌があるか。
部屋に招かれてから女は勝手に話し出した。それ以外に話すことはないとでもいうように。
「どうして? 貴方もおかしなことを言うのね。さっきも言ったように必要じゃないからよ。それはわたくしにとっ
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