掌編小説『しゃしんの女』 〜中〜/朝原 凪人
 
え、きっと正しいのだと思いますよ。私の今抱いている感情は寂しさに似ているのでしょう」

 続きを。私は女を促し、そして煙草に火を点けた。彼女は頷き、再び抑揚の無い声を紡いだ。

「父との謁見の際、わたくしも同席したのです。彼が謁見の間に入ってきた瞬間に分かりましたわ。いえ、判ると言った方がいいのかしら? 若しくは解ると」

 私は女の言葉を頭の中で数回反芻し、その意味を何とか理解した。文字を、言葉を扱う人間に対する配慮だったのだろうか。いや、それは考えすぎか。

「そうですね、解った、のでしょう」

「では、そういうことにしておきましょう。それはあの人も同じようでした。驚きや喜
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