掌編小説『しゃしんの女』 〜中〜/朝原 凪人
儀なのだと。もちろんそれは形式的なものです。だって、あの人ももう捨てていたのですから。そんな人が出会いを大切にだなんて、とんだ笑い話ではないですか」
とても笑い話とは思えない平坦且つ平淡な口調で話し、かつての、人間であったときの、生きていたときの癖なのだろう女は口元に手をやった。その動きは王族に相応しく、麗しいものであったが肝心の顔が無表情では、優雅さには程遠かった。
「随分寂しそうな眼をするのですね。寂しい、もう長い間感じたことが無い感情ですから、その表現が正しいかどうかは分かりかねますけれど」
黒の眼は光を放つことはなくとも、しっかりと私の眼を捉えていた。
「いえ、
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