砂浜で拾った貝殻はどこまでも沈んでいった/ベンジャミン
 
泣くために悲しんだことがある


砂浜にかじりつくようにくいこんでいた白い貝は
まるで生きているみたいに艶やかな色をしていたから
指先で撫でたら深くもぐりこんで逃げてしまうような気がした

だから慌ててつかまえたつもりだったのに
仰向けになった貝の内側はやっぱりすべすべしていて
それがどうしょうもなく悲しかった


おまえを海にかえしてあげよう


手のひらの中で
押し黙ったままの貝(殻)は嘘みたいに渇いてしまって
石灰質の白さが痛々しい身体を覆っていたけれど

海原に横たわるボートの上で
その内側を満たすための海はありあまるほど広い

たとえばここで
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