砂浜で拾った貝殻はどこまでも沈んでいった/ベンジャミン
 

一粒の涙をこぼしたとしても
それに気づいてくれるのはもはや貝(殻)のおまえだけ


だから悲しいとは思わない


ゆっくりとそのやわらかい曲線をすべらせながら
手のひらからはなれてゆく
貝(殻)はどこまでも沈んでいった

やがてその身がくるんでいたのだろう気泡が
新しい命の芽生えを予感させるように
まるく小さな息を浮かべるのを


それは
ありあまるほど広い
海からの返還であるかのように


僕はやっと泣くことができた


    
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