悲しみに別れを告げるとき/ベンジャミン
 
風が言葉をさらっていった

ただ黙って
夕暮れを見送る

綺麗なものへの憧れは尽きることなく

たとえばそう
悲しみの結晶が透明であるならば
過去も無かったことにできるだろうか

過ちは
そうやって降り積もり
費やした時間の重さで押し固められて
まるで万年雪のように
心を覆ってゆく
そして


冬が来る


冷たくなった耳を両手で押さえれば
いつかどこかで聞いた
波音が聞こえる

それは風のいたずらだと
わかっていても

あふれる涙の理由を探すように

「悲しい」と
動かしたはずの唇が

「淋しい」と
呟いてしまうとき

押さえた胸のぬくもりが
生きることへの執着に置き換えられても

それを希望と名づけるのは

あなたと出会うためだったのです

     
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