知らないことを知っている/ベンジャミン
 
ったけれど
もしかしたら自分自身に
言っていたのかもしれないけれど

落ち着いたら
その子はすっかり黙ってしまって
何があったのかなんて聞けるはずもなく
見つめ続けることにも罪を感じて

しかたなく見上げた空には
星が光っていた

「どうして星は光っているんだろうね」

ベランダの手摺に並んでもたれながら
その子は

「見つけてもらいたいからだよ」と
呟いたあと

「先生はどうして先生をしているの?」と
いきなり聞かれた僕は思わず

「見つけるためだよ」と
答えた

知らないことが多いから
見つけるために教えてる

そんなつもりでいたことなんてなかった
けれど確かにその日
僕が知らないことを知っている

その子から
僕はそんなことを教わった

       
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