始発に乗って母は田舎に帰る/ベンジャミン
母さん僕は
あなたの子供であることを何度
嫌味っぽく言ったかしれない
似ていると感じるほどに
それを振り払うような喧嘩を何度
繰り返したかしれない
そんな母が
「田舎に帰るから駅まで送ってくれ」
と、言うので
まだ明けきらぬ朝もやの中を
車で駅まで送ってあげた
その途中
母はしきりに
婆ちゃんに会うのを怖がっていた
婆ちゃんにとっては
自分はいつまでたっても子供だから
婆ちゃんに会うと怒られそうで怖いと
母が田舎に帰るときは
いつも始発だ
母の旅行かばんの中には
婆ちゃんの好きな食べ物と
婆ちゃんの好きな孫の写真と
婆ちゃんの好き
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