始発に乗って母は田舎に帰る/ベンジャミン
 
好きなひ孫の写真が入っている

駅につくと
母はいそいそと切符を買って
ホームの中に消えていった
その寸前まで
婆ちゃんに会うのを怖がりながら



母が婆ちゃんを怖がる理由を
他にも聞いたことがある

自分と似ているからだと

電車に揺られ
母は何を思いながら田舎へ帰るのだろう

呼び起こされる記憶があるとして
その記憶の中でなくとも
確かに自分が婆ちゃんの子供であることを
とくに意識なんてしなくとも

懐かしい景色が見えてくれば

母は母ではなく
婆ちゃんの子供にかえるのだと

遠ざかる電車を見送りながら

僕は自分が
そんな母の子供であることを思い出す

      
   グループ"タイトル長いー詩"
   Point(9)