センドウ先生の内緒話(ろんぐばーじょん)/北乃ゆき
 
ぐん
うぅううぐぐ痛い痛いうぐぐぐ
イタイイタイイタイぐぐぐぐ痛い痛い痛いイタイ
赤と白が混じりピンク色にぬれて
「せんせいいたいよ」
「注射よりいたくないよ」

じゅうにさいのある日
診察室はしずか
とてもしずか


わたしの町においしゃさまは一人しかいなかった
そのたった一人のおいしゃさまの
センドウ先生は
竹山さんちのかなちゃんの頭病みも
白田さんちのとおるくんの腹痛も
お寺のとなりのサダおばさんの腫れ物も
川向こうのダイスケさんの虫歯も
あっという間に治したそうで
「あの先生は名医だ」と裏のおばちゃんはいつも言って
それを聞いた隣のタキさんも
「あの先生は名医だ」と言って
それを聞いた母さんも
「あの先生は名医だ」と言った


何がおきたかわからずに1年
わかって3年
更に3年
センドウ先生との内緒話を母に教えたのだけれど
よく伝わらなくて
それっきり


仙頭医院は3階建ての病院になっていた

   グループ"童話風味"
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