射干玉の月/
朱雀
無明の闇から こちらを見つめ
綺麗な月は嗤うのです
虚空に伸べた 手の平に
冷たい銀の棘を刺し
水面(みのも)を掬(きく)す 白い手に
波紋に千切れた 水渋(みしぶ)をからめ
ただ渺漫(びょうまん)と 嗤うのです
昏愚(こんぐ)に喘ぐ 憂人よ
死魄の闇に手をかざせ
朔の真中(まなか)に照る月を
心裡の底に映し出せ
それが出来ぬというのなら
虚しい愚行を重ねるまでと
慈悲の光を投げかけて
綺麗な月は嗤うのです
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グループ"月下の幻視者"
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