月夜見歌/朱雀
 
朔 
 暗い闇夜に 星は降り
 褪めた吐息を ひと抱え
 虚舟(うつおぶね)に 腰掛けて
 平らな川面を 往来せん

二日月 
 茜の空に 銀の糸
 透ける光が 胸を射し
 灯影(ほかげ)に 頬も紅を注す

繊月
 掛かる けわいに こころ奪われ
 穏やかならぬ 口伝(くちづて)を
 後の祭りと 気付かせて
 昇る虚月の薄笑(うすわらい)

破鏡
 物のはずみに 落とした染みは
 やがて薄れて 目立ちはせぬが
 どこで見てたか唐烏(とうがらす)
 かたわれ月に告げ知らせ

十三夜
 待ち侘びたりと 祈りを捧ぐ
 せめて ひとたび その瞳(め)に写り
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