記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 
じゃねぇぞ!」
「ぶっ殺してやる」等と言われて、俺は何が嬉しかったんだろう?
「X月○日の何時に成田に到着するから、包丁でも何でももって殺しにこいよ」
と嬉しそうに返信する俺は、確かに震えるような快感の中にいた。
結局、俺は殺される事もなく、今はこうして生きているのだが、
どっちかがどっちを殺してもおかしくなかっただろう。
日本にいたら、間違いなく何らかの事件になっていたと思う。

そういえば、俺は一度、嘉人を殴った事がある。
「舞子を手放すなよ。手放したら殴るぜ。」と約束したのだ。
奪ったのは俺だが、嘉人が手放したのも事実、と言う事で殴った。
確か、アメリカ大使館に行った帰
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