記憶の断片小説・ロードムービー「卒業」/虹村 凌
 
た帰りだったか。
あまり元気が無かったのも事実だが、殴る直前に嘉人と目があった瞬間に、
力が抜けたのも事実だ。何故に力が抜けたのか、今は忘れてしまった。
しかし、俺は全力で殴る事と止めて、「ぺちん」と言う非力な拳を当てて終わった。
殴ったって、何かが戻る訳じゃない。
暴力で解決するのは、殴った方の鬱憤だけだ。

結局、最後の最後は、お互いを傷つけるだけ傷つけて、
全てを否定しあって、貶しあって、終わってしまった。
下らない。
何とも下らないだが、俺は今でも、舞子がいたから、死なずに済んだと思っている。
今では笑っていわれるアトピーの事だが、
一番酷かった時期には、何度も死に
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