死への誘ない/ajisai
 
幼い少女の顔は蒼白で呼吸も浅い
傍らには少女の父親と母親が涙を堪え
白い小さな手を握りしめていた

少女は朧げな目で天井を見上げていた
そこには黒髪、黒装束、黒い翼の少年が
宙に浮いて少女を見下ろしていた
少年の月のようなトパーズの瞳には
哀しげな影が映っている様に見えた

少年はそっと少女に手を差し伸べた
少女は薄く微笑んで涙を一粒零し
「ありがとう」
と細い声を一声漏らす
父の握る手からそっと右手を離し
手を差し出して少年の手の平に重ねた

すると少女の魂は肉体を離れ
天へと伸ばした手は力なくベッドに落ちた

両親が哀しみに嘆く中
少年は魂となった少女
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