異形の詩歴書 14歳春/佐々宝砂
 
をさらした姿勢で」なんだかわからない足りない何かを探しているミンダの姿は、そのまま、当時の私の姿だったから。それからもうひとつ好きだったのは、「記事にならない事件」だった。私は、そこに登場する、いっぽんの木に変身する少女や、上着を脱ぎ捨てて鳩になる青年でありたいと願った。「記事にならない事件」や「ミンダの店」の言葉は、男っぽいコトバで武装し、そのくせひどく臆病で、女の子同士でしか話ができないしょーもない中学生だった私のなかに、すんなりとはいってきた。「チェス」の中で語られる死についての言葉も、私の青い脳髄にやんわりと確実に侵入した。

 けれど、「ふゆのさくら」はわからなかった。ひらがなだけ
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